2025/12/18
お役立ちコラム

企業の不動産投資|経営者が知るべきメリット・デメリットと成功のコツ

企業の不動産投資|経営者が知るべきメリット・デメリットと成功のコツ

中小企業の経営者にとって、不動産投資は単なる資産運用にとどまらず、事業の安定化や節税対策、さらには事業承継まで見据えた多角的な経営戦略となり得ます。
会社の将来や相続を考える経営層が増える中で、本業とは別の収益源を確保する重要性は高まっています。
企業が不動産投資を行うメリット・デメリットから、節税の仕組み、成功に導く具体的なステップとコツまで、経営者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

1. 今、経営者が不動産投資に注目する理由

現代の経営環境において、多くの経営者が不動産投資に関心を寄せています。
その背景には、本業の収益だけに依存する経営モデルへの危機感があります。
経済の先行きが不透明な中で、事業の柱を複数持つことは、業績変動のリスクを分散させ、経営基盤を安定させる上で極めて有効です。
また、低金利が続く状況は、金融機関からの融資を受けやすく、レバレッジを効かせた投資を始める好機と捉えられます。
さらに、不動産投資はインフレ対策としても機能します。
物価が上昇すれば、家賃収入や不動産自体の資産価値も上昇する傾向があるため、現預金で資産を保有するよりもインフレリスクを軽減できます。
これらの理由から、事業の多角化と財務体質の強化を目指す経営者にとって、不動産投資は魅力的な選択肢となっています。

経営者が不動産投資に注目する理由

2. 企業が不動産投資で得られる5つのメリット

企業が不動産投資に取り組むことで、事業の安定化や財務内容の改善に繋がる多様なメリットが期待できます。
具体的には、本業とは別の安定した収益源の確保によるリスク分散、役員や従業員の社宅としての活用による福利厚生の充実、節税効果、そして将来の相続対策など、その効果は多岐にわたります。
以下に、企業が不動産投資で得られる代表的なメリットを一覧で紹介し、それぞれの詳細を解説します。

2-1. 安定した収益源で事業のリスクを分散できる

不動産投資によって得られる家賃収入は、比較的安定したインカムゲインであり、本業の業績に左右されない収益源となります。多くの事業は、景気変動や市場の変化、予期せぬトラブルなど、様々な外的要因によって売上が大きく変動するリスクを抱えています。しかし、不動産からの収益が毎月安定して入ることで、本業が一時的に不振に陥った際にも、会社全体のキャッシュフローを下支えする効果が期待できます。
このように収益源を複線化することは、事業ポートフォリオのリスク分散に繋がり、経営の安定性を大きく向上させます。
特に、一つの事業への依存度が高い企業にとって、不動産投資は強固な経営基盤を築くための有効な手段となり得ます。

2-2. 役員や従業員の社宅として活用し福利厚生を充実させる

法人が所有する物件は、賃貸に出すだけでなく、役員や従業員のための社宅として活用することが可能です。
企業が従業員から一定の家賃(賃料相当額の50%以上が目安)を受け取ることで、従業員は周辺の家賃相場よりも安価に住居を確保できます。
これは従業員満足度の向上に直結し、優秀な人材の確保や定着率の向上といった採用面での競争力強化にも繋がります。
企業側も、従業員から受け取る家賃は収益として計上しつつ、不動産の管理費や減価償却費、固定資産税、ローンの金利などを経費として計上できるため、税務上のメリットも享受できます。このように社宅としての活用は、福利厚生の充実と企業経営の両面に利益をもたらす一石二鳥の戦略です。

2-3. 本業とは別のキャッシュフローを確保できる

不動産投資は、本業の売上とは独立したキャッシュフローを生み出す源泉となります。
家賃収入から経費やローン返済を差し引いて手元に残る現金は、会社の資金繰りに余裕をもたらします。
この安定したキャッシュフローは、本業の業績が落ち込んだ際の運転資金として活用できるほか、新たな事業展開や設備投資のための原資とすることも可能です。
金融機関からの追加融資に頼ることなく、自己資金で事業投資の意思決定ができるため、経営の自由度が高まります。
また、会計上は減価償却費の計上によって赤字であっても、手元には現金が残るという状況も起こり得ます。
このような財務上の柔軟性は、企業の持続的な成長を支える重要な要素です。

2-4. 減価償却費を利用した節税効果が期待できる

不動産投資が企業にもたらすメリットの一つに、減価償却費を利用した節税効果があります。
不動産の取得価額のうち、建物や設備の部分は時の経過とともに価値が減少するとみなされ、その価値の減少分を法定耐用年数にわたって費用として計上できます。
この減価償却費は、実際にお金が出ていくわけではない会計上の費用です。
そのため、家賃収入によってキャッシュフローがプラスであっても、減価償却費を計上することで帳簿上の利益を圧縮し、法人税の課税対象となる所得を減らす効果があります。
特に本業で大きな利益が出ている企業にとっては、課税所得を合法的に繰り延べ、納税額を抑えるための有効な手段となります。

2-5. 相続税対策として資産を圧縮できる

経営者の事業承継や相続を見据えた際、不動産投資は有効な相続税対策となります。
現金や有価証券は時価がそのまま相続財産評価額となりますが、不動産の相続税評価額は、実勢価格よりも低く設定されている路線価や固定資産税評価額を基に計算されます。
一般的に、土地は時価の約8割、建物は約7割程度で評価されることが多いです。
さらに、その不動産を第三者に賃貸している場合、「貸家建付地」や「貸家」として評価額がさらに2~3割程度低くなります。
これにより、現金を不動産に換えるだけで相続財産の評価額を大幅に圧縮でき、結果として相続税の負担を軽減することが可能になります。

3. 【仕組みを解説】不動産投資で節税ができるカラクリとは?

企業の不動産投資における最大の魅力

企業の不動産投資における最大の魅力の一つが節税効果ですが、その仕組みは少し複雑です。
なぜ不動産を持つことが法人税の軽減に繋がるのか、その中心的な役割を果たすのが「減価償却」という会計処理です。
これは、現金の支出を伴わずに費用を計上できる仕組みであり、本業の利益と不動産事業の会計上の損失を合算(損益通算)することで、会社全体の課税所得を圧縮します。
ここでは、その具体的なカラクリと、どのような物件が特に節税に有利なのかを解説します。

3-1. 会計上の赤字を作り出す減価償却の仕組み

減価償却とは、不動産の建物や設備などの取得費用を、法的に定められた耐用年数に応じて分割し、毎年経費として計上していく会計処理のことです。
この減価償却費は、実際にお金が出ていくわけではない「非資金費用」ですが、会計上は費用として扱われます。
そのため、年間の家賃収入から管理費やローン金利などの実質的な支出を差し引いたキャッシュフローがプラスであっても、減価償却費がそれを上回る場合、不動産事業の帳簿上は「赤字」となります。
この会計上の赤字を、好調な本業で得た黒字と相殺(損益通算)することが可能です。
結果として、会社全体の課税所得が圧縮され、法人税の納税額を抑えることができるのです。

3-2. 中古の木造アパートが節税に有利な理由

節税効果をより高めるためには、短期間で多くの減価償却費を計上できる物件を選ぶことがポイントになります。
その点で特に有利なのが、中古の木造アパートです。
建物の法定耐用年数は構造によって異なり、木造は22年、鉄骨造は34年、鉄筋コンクリート造は47年と定められています。
この耐用年数が短いほど、一年あたりに計上できる減価償却費は大きくなります。
特に、法定耐用年数(22年)を超えた木造アパートの場合、簡便法により最短4年という短い期間で建物の取得費用全額を償却できます。
これにより、購入後数年間にわたって多額の減価償却費を計上し、本業の利益を大幅に圧縮することが可能となり、高い節税効果が期待できるのです。

4. 経営者が知っておくべき不動産投資の3つのリスク

不動産投資は企業に多くのメリットをもたらす一方で、事業である以上、様々なリスクが伴います。
これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じなければ、期待した収益が得られないばかりか、本業の経営にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、経営者が不動産投資を始める前に必ず知っておくべき代表的なリスクとして、空室・家賃滞納、金利上昇、そして本業の融資審査への影響という3つの点について具体的に解説します。

4-1. 空室や家賃滞納によって収益が減少する可能性

不動産投資における最も直接的なリスクは、空室の発生や入居者による家賃滞納です。
想定していた入居者が決まらず空室期間が長引けば、その間の家賃収入はゼロとなり、収益計画は大きく狂います。
ローン返済や管理費などの支出は継続して発生するため、キャッシュフローが悪化する原因となります。
また、家賃滞納が発生した場合も、督促や法的手続きに時間と費用がかかり、収益の減少に繋がります。
これらのリスクを低減するためには、賃貸需要の安定したエリアの物件を選ぶこと、入居者審査や滞納保証がしっかりした信頼できる管理会社を選定すること、そして空室保証のあるサブリース契約を検討するなど、事前の対策が不可欠です。

4-2. 金利の上昇でローン返済額が増える危険性

不動産投資では金融機関からの融資を活用することが一般的ですが、これは金利変動リスクを伴います。
特に変動金利でローンを組んだ場合、将来市場金利が上昇すると、それに連動してローンの返済額も増加します。
返済額の増加はキャッシュフローを直接的に圧迫し、収支計画を悪化させる要因となります。
最悪の場合、家賃収入だけではローン返済を賄いきれなくなり、本業の資金から補填する必要が出てくる事態も考えられます。
このリスクに備えるためには、金利が上昇しても経営が揺らがないよう、自己資金を多めに入れる、収支シミュレーションを複数の金利パターンで作成しておく、あるいは金利が固定される期間の長いローン商品を選ぶなどの対策を検討する必要があります。

4-3. 本業の融資審査に影響を及ぼす場合がある

法人が不動産投資ローンを組むと、その借入金は貸借対照表上の負債として計上されます。
これにより、総資産に占める負債の割合が高まり、自己資本比率などの財務指標が悪化することがあります。
金融機関は企業の財務状況を厳しく評価するため、不動産投資による過大な借入が、本業における運転資金や設備投資のための新たな融資審査において、マイナスに影響する可能性があります。
本業の成長に必要な資金調達の機会を損なわないよう、不動産投資の規模や借入額は、会社の財務体力や将来の事業計画を十分に考慮した上で、慎重に決定しなければなりません。

5. 企業の不動産投資を成功に導く4ステップ

企業の不動産投資は、思いつきで進めるべきではありません。
メリットを最大化しリスクを最小化するためには、明確な目的意識を持ち、計画的なステップを踏むことが重要です。
成功への道のりは、投資目標を具体化する事業計画の策定から始まり、信頼できるパートナーとの情報収集、金融機関との交渉、そして最終的な契約・引き渡しへと続きます。
ここでは、その一連の流れを4つのステップに分け、各段階で押さえるべきポイントを具体的に解説します。

5-1. 【STEP1】事業計画を立てて投資目標を明確にする

不動産投資を始めるにあたり、最初に行うべきは「なぜ投資をするのか」という目的の明確化です。
目的が節税なのか、安定収益の確保なのか、あるいは福利厚生の充実なのかによって、選ぶべき物件の種別やエリア、規模は大きく異なります。
目的が定まったら、それを達成するための具体的な数値目標(目標利回り、投資期間、確保したいキャッシュフローなど)を設定します。
そして、それらの目標に基づき、詳細な事業計画書を作成します。
計画書には、物件価格や諸費用、家賃収入、運営経費、ローン返済額などを盛り込み、複数のシナリオで収支シミュレーションを行うことが重要です。
この事業計画が、今後の全ての意思決定の土台となります。

5-2. 【STEP2】不動産会社を選んで物件情報の収集を始める

明確な事業計画が完成したら、次にその計画を実現するためのパートナーとなる不動産会社を選びます。
企業の不動産投資は、個人の投資とは異なり、税務や法人経営に関する専門的な知見が求められるため、法人取引の実績が豊富な会社を選ぶことが肝要です。
複数の会社と面談し、自社の投資目的を深く理解し、メリットだけでなくリスクについても誠実に説明してくれるかを見極めます。
信頼できるパートナーを見つけることで、一般には出回らない優良な非公開物件の情報提供を受けられる可能性も高まります。
提案された物件情報を、自社の事業計画と照らし合わせながら、立地条件、築年数、収益性、将来性などを多角的に分析し、投資対象を絞り込んでいきます。

5-3. 【STEP3】金融機関へ融資の相談と申し込みを行う

購入したい物件の候補が絞れたら、資金調達のために金融機関へ融資の相談を進めます。
法人融資の審査では、対象物件の収益性や担保価値はもちろんのこと、本業の業績が極めて重要視されます。
通常、過去3期分の決算書の提出を求められ、事業の安定性や将来性が厳しく審査されます。
まずは、日頃から付き合いのあるメインバンクに相談するのが一般的ですが、不動産投資に積極的な金融機関を不動産会社から紹介してもらうのも有効な手段です。
複数の金融機関に打診し、融資額、金利、返済期間といった条件を比較検討することで、自社にとって最も有利な条件を引き出す交渉が可能になります。

5-4. 【STEP4】売買契約を締結し物件の引き渡しを受ける

金融機関から融資の内定を得られたら、売主との間で不動産売買契約を締結します。
契約に先立ち、宅地建物取引士から物件に関する重要事項説明を受け、権利関係や法的な制限、建物の状態などについて最終確認をします。
内容にすべて納得した上で、契約書に署名・捺印し、手付金を支払います。
その後、金融機関との間で金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結し、融資実行日に残代金の決済と所有権移転登記の手続きをします。
司法書士が立ち会い、登記が完了すれば、物件の鍵が引き渡され、正式に不動産オーナーとしての事業運営が始まります。
購入後は、管理会社と連携し、速やかに入居者募集などの実務に着手します。

6. 不動産投資を成功させるために押さえるべき3つのコツ

企業の不動産投資を成功させ、その効果を最大限に引き出すためには、単に物件を購入するだけでなく、いくつかの戦略的な視点が求められます。
どの名義で資産を保有するべきか、どのタイミングで融資を申し込むのが最適か、そしてどのような専門家と手を組むべきか。
これらの要素は、投資の成否を大きく左右します。
ここでは、企業の不動産投資をより有利に進めるために、経営者が押さえておくべき3つの重要なコツを解説します。

6-1. 個人・法人・資産管理法人、どの名義で購入すべきか検討する

不動産を購入する際には、経営者個人の名義、事業を営む既存法人の名義、あるいは不動産を所有・管理するためだけに設立する資産管理法人の名義という選択肢があります。
どの名義を選ぶかによって、適用される税率(所得税・法人税)、経費として認められる範囲、融資の受けやすさ、そして将来の相続・事業承継時の手続きが大きく異なります。
例えば、経営者個人の所得が高く所得税率が高い場合、法人名義で不動産所得を得る方が税負担を抑えられる可能性があります。
また、本業と不動産事業のリスクを分離したい場合や、スムーズな資産承継を計画する場合には、資産管理法人の設立が有効な戦略となります。

6-2. 本業の業績が好調なタイミングで融資を申し込む

法人として不動産投資のための融資を受ける際、金融機関が最も重視する審査項目の一つが本業の業績です。
決算書の内容が良好で、事業が安定的に成長している企業は、返済能力が高いと評価され、融資審査に通りやすくなります。
それだけでなく、より低い金利や長い返済期間、多い融資額といった有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
したがって、不動産投資の実行は、本業の業績が好調なタイミングを狙って計画することが賢明です。
反対に、業績が不安定な時期や赤字決算の直後などは、審査が厳しくなったり、融資を断られたりするリスクがあるため、避けるべきタイミングと言えます。

6-3. 長期的な関係を築ける信頼できるパートナーを見つける

不動産投資は、物件を購入したら終わりという短期的な取引ではありません。
購入後の賃貸管理、建物のメンテナンス、入居者対応、そして将来の売却まで、長期にわたる事業運営です。
そのため、一連のプロセスを通じて伴走してくれる信頼性の高いパートナーの存在が成功の鍵を握ります。
自社の投資目的を深く理解し、的確な物件を提案してくれる不動産会社はもちろん、高い入居率を維持してくれる管理会社、節税や法人経営に詳しい税理士など、各分野の専門家と良好な関係を築くことが重要です。
目先の利益だけを追求するのではなく、長期的な視点で企業の成長を共に考えてくれるパートナーを選ぶことが求められます。

7. まとめ

企業による不動産投資は、本業とは別の安定収益を確保し、事業リスクを分散させる有効な経営戦略です。
減価償却を活用した節税効果や、社宅利用による福利厚生の充実、相続税対策といった多様なメリットを享受できます。
しかし、その一方で空室や金利上昇、財務指標の悪化といったリスクも存在するため、実行には慎重な判断が求められます。
成功のためには、まず投資目的を明確にした事業計画を策定し、法人取引に長けた不動産会社や税理士といった信頼できるパートナーを見つけることが不可欠です。業績が好調なタイミングで、自社の状況に最適な名義を選択して投資を実行することが、その効果を最大化する鍵となります。

企業による不動産投資は、本業とは別の安定収益を確保し、事業リスクを分散させる有効な経営戦略
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