相続手続きの流れとは?期限や必要書類、銀行での進め方を解説
相続手続きの流れとは?期限や必要書類、銀行での進め方を解説
相続手続きとは、亡くなった後、その方が所有していた遺産を民法で定められた相続人が引き継ぐための一連の作業を指します。 この手続きの流れには、遺言書の確認から始まり、相続人の確定、財産調査、遺産の分け方を決める遺産分割協議、そして各財産の名義変更まで、多くの段階が含まれます。手続きには期限が設けられているものも多く、進め方を間違えると不利益を被る可能性もあるため、全体像をわかりやすく理解しておくことが重要です。 この記事では、相続手続きの具体的な流れや必要書類、銀行での進め方などを解説します。
- 1. 相続が発生したら最初に行うべき3つのこと
- 1-1. 遺言書の有無を確認する
- 1-2. 戸籍謄本を取得して相続人を確定させる
- 1-3. どのような遺産があるか財産調査を行う
- 2. 【期限別】相続手続きのスケジュールと全体像
- 2-1. 死亡後7日以内:死亡届・火葬許可申請書の提出
- 2-2. 死亡後14日以内:年金受給停止や健康保険の資格喪失手続き
- 2-3. 3ヶ月以内:相続放棄または限定承認の申述
- 2-4. 4ヶ月以内:故人の所得税の準確定申告
- 2-5. 10ヶ月以内:相続税の申告と納税
- 2-6. 1年以内:遺留分侵害額請求の申し立て
- 3. 遺産の分け方を決める遺産分割協議の進め方
- 3-1. 相続人全員で遺産分割について話し合う
- 3-2. 合意した内容を遺産分割協議書として作成する
- 4. 【財産別】預貯金や不動産などの名義変更手続き
- 4-1. 金融機関での預貯金の解約・払い戻しの方法
- 4-2. 法務局での不動産の相続登記申請
- 4-3. 株式や自動車の名義を書き換える手順
- 5. 相続手続きで必要になる書類一覧
- 5-1. 被相続人(亡くなった方)に関する必要書類
- 5-2. 相続人全員分を準備するべき書類
- 5-3. 財産の種類ごとに求められる書類
1. 相続が発生したら最初に行うべき3つのこと
大切な方の死亡後、深い悲しみの中で様々な手続きを進めなければなりません。 何から手をつけて良いか分からなくなることも少なくありませんが、相続においては最初に行うべき重要な手続きが3つあります。それは「遺言書の有無の確認」「相続人の確定」「財産調査」です。 これらの手続きは、その後の相続手続き全体の方向性を決める基礎となるため、落ち着いて一つずつ確実に行うことが大切です。 まずはこの3つのステップから相続手続きを開始しましょう。
1-1. 遺言書の有無を確認する
相続手続きを始めるにあたり、まず故人の遺言書の有無を確認します。 遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産分割が進められるため、手続きの進め方が大きく変わります。 遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があり、生前に故人が保管していそうな場所(自宅の金庫や貸金庫、付き合いのあった信託銀行など)を探します。特に公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されているため、そちらに問い合わせることで有無の確認が可能です。 自筆証書遺言など、法務局の保管制度を利用していない遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になるため、勝手に開封してはいけません。
1-2. 戸籍謄本を取得して相続人を確定させる
遺言書の確認と並行して、誰が相続人になるのかを法的に確定させる作業が必要です。 法定相続人を確定するためには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本をすべて取得します。 これにより、現在の配偶者(妻など)や子のほか、過去の婚姻歴や養子縁組の有無、認知している子の存在なども判明します。 相続人が1人であってもこの作業は必須です。相続関係が複雑な場合、子が先に亡くなっていれば孫が代襲相続人になることもあります。 相続人が確定したら、次に相続人全員の現在の戸籍謄本も取得します。 不動産の相続登記では、相続人の戸籍の附票も必要です。 後見人がいる場合や相続人以外への遺贈がある場合でも、まずは法定相続人を正確に把握することが手続きの基本となります。
1-3. どのような遺産があるか財産調査を行う
相続人を確定させる作業と同時に、故人がどのような財産を遺したのかを調査します。 相続財産には、預貯金や不動産といった固定資産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。 調査の手がかりとして、自宅にある預金通帳や不動産の権利証、固定資産税の納税通知書、証券会社からの配当金計算書、保険会社からの通知などを確認します。生命保険も受取人によっては相続財産とみなされる場合があります。 タンス預金などの現金の有無も確認が必要です。 後々の相続放棄の判断にも関わるため、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も漏れなく把握することが極めて重要となります。
2. 【期限別】相続手続きのスケジュールと全体像
相続手続きの中には、法律によって厳格な期限が定められているものが数多く存在します。 これらの期限を守らないと、相続放棄ができなくなったり、税金面でペナルティが課されたりするなどの不利益が生じる可能性があります。故人の死亡直後から始まり、7日以内、14日以内、3ヶ月、4ヶ月、10ヶ月、1年以内と、時系列に沿って行うべき手続きが続きます。 ここでは、各手続きの期限と内容をスケジュールに沿って示し、相続手続きの全体像を把握できるように解説します。
2-1. 死亡後7日以内:死亡届・火葬許可申請書の提出
故人が亡くなった事実を知った日から7日以内に、市区町村役場へ死亡届を提出しなければなりません。 この届出は、国内で死亡した場合は死亡診断書または死体検案書を添付して行います。 提出先は、故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地のいずれかの市役所や区役所、町村役場です。通常、死亡届の提出と同時に火葬許可申請書を提出し、火葬許可証の交付を受けます。 これらの手続きは葬儀社が代行してくれるケースが多いですが、届出義務者である親族は、期限内に手続きが完了するように手配する必要があります。
2-2. 死亡後14日以内:年金受給停止や健康保険の資格喪失手続き
故人が年金を受給していた場合、受給を停止するための手続きが求められます。 厚生年金は死亡後10日以内、国民年金は14日以内に、年金事務所または年金相談センターへ「受給権者死亡届(報告書)」を提出します。 この手続きが遅れると年金の過払いが発生し、後で返還を求められることがあります。また、故人が加入していた健康保険の資格喪失手続きも必要です。 国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は死亡後14日以内に市区町村役場で、会社員などが加入する健康保険組合の場合は死亡後5日以内に勤務先を通じて手続きを進めます。
2-3. 3ヶ月以内:相続放棄または限定承認の申述
財産調査の結果、借金などのマイナスの財産が預貯金などのプラスの財産を明らかに上回る場合、相続放棄を検討します。 相続放棄を選択する場合、自身のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。この手続きを行わない場合、単純承認したとみなされ、すべての資産と負債を引き継ぐことになります。 相続放棄が不要な場合でも、期限内に判断を下すことが重要です。 なお、プラスの財産の範囲内でのみ負債を弁済する「限定承認」という方法もあり、これも同様に3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が求められます。
2-4. 4ヶ月以内:故人の所得税の準確定申告
故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに所得税の確定申告を行うことを準確定申告と呼びます。 この手続きは、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があり、申告と納税の期限も同日です。 申告書の提出先は、故人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。故人が個人事業主であった場合や、不動産収入があった場合、また給与所得者でも年収が2,000万円を超えていた場合などに準確定申告が必要となります。 申告の結果、源泉徴収されていた税金が還付されることもあります。
2-5. 10ヶ月以内:相続税の申告と納税
相続した財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。 申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。 申告書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。相続税は原則として現金で一括納付しなければなりません。 相続財産に不動産が含まれる場合、その評価額を算出するために固定資産税の納税通知書などが参考になります。 期限内に申告・納税を行わないと、加算税や延滞税といったペナルティが課されるため、注意が必要です。
2-6. 1年以内:遺留分侵害額請求の申し立て
遺言などにより、法律で保障された相続人の最低限の取り分である「遺留分」が侵害された場合、遺留分侵害額請求権を行使できます。 この権利は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しないと、時効によって消滅してしまいます。遺留分の割合は民法で定められており、相続人が配偶者や子などの場合は法定相続分の2分の1です。 請求はまず内容証明郵便などで相手方に意思表示をすることから始め、当事者間の話し合いで解決しない場合は家庭裁判所に調停を申し立てる流れとなります。
3. 遺産の分け方を決める遺産分割協議の進め方
遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある際には、相続人全員で遺産の分割方法について話し合う「遺産分割協議」を実施します。 この協議は、相続手続きの中でも特に重要なプロセスであり、相続人全員の合意形成が不可欠です。 協議で合意した内容は、後の不動産登記や預貯金の解約といった各種名義変更手続きの基礎となります。ここでは、遺産分割協議の具体的な進め方と、その結果を正式な書面にする方法について解説します。
3-1. 相続人全員で遺産分割について話し合う
遺産分割協議は、確定した法定相続人全員が参加して行わなければなりません。 相続人のうち一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。 協議では、財産調査で明らかになったすべての遺産について、誰がどの財産を、どのような割合で相続するのかを具体的に話し合います。 必ずしも法律で定められた法定相続分通りに分ける必要はなく、全員が納得すれば自由に分割方法を決定することが可能です。もし相続人間で意見がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、第三者である調停委員を交えて話し合いを進めることになります。
3-2. 合意した内容を遺産分割協議書として作成する
遺産分割協議で相続人全員の合意が形成されたら、その内容を書面に残すために遺産分割協議書を作成します。 この書類は、相続人全員が合意したことを証明する法的な契約書としての役割を果たし、不動産の相続登記や預貯金の解約手続きなど、多くの場面で提出を求められます。特定の書式はありませんが、どの財産を誰が相続するのかを明確に記載し、相続人全員が署名した上で実印を押印することが必要です。 後々のトラブルを避けるためにも、作成した遺産分割協議書は、相続人の人数分を作成し、各自が1通ずつ保管するのが一般的です。
4. 【財産別】預貯金や不動産などの名義変更手続き
遺産分割協議が整い、誰がどの財産を相続するかが確定したら、次に行うのは各財産の名義変更手続きです。 故人名義のままでは、財産を売却したり、預金を引き出したりすることができません。 預貯金や不動産、株式、自動車など、財産の種類によって手続きを行う窓口や必要書類、変更の方法が異なります。ここでは、主要な財産について、それぞれどのような手順で名義変更を進めていくのかを具体的に解説します。
4-1. 金融機関での預貯金の解約・払い戻しの方法
故人名義の預貯金を相続人が引き継ぐには、取引のあった銀行などの金融機関で手続きが必要です。 まず金融機関の窓口に死亡の事実を伝えると、不正な引き出しを防ぐために口座が凍結されます。 その後、金融機関所定の相続届や、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺言書または遺産分割協議書といった書類を提出します。書類の確認が完了すると、預貯金は解約され、指定した相続人の口座へ入金されるか、現金で払い戻されるという方法で手続きが進みます。 金融機関ごとに手続きの詳細は異なるため、事前に電話などで確認するのが確実です。
4-2. 法務局での不動産の相続登記申請
土地や家、建物などの不動産を相続した場合、所有権を故人から相続人へ変更するための相続登記が必要です。 この手続きは、対象となる不動産(家屋など)の所在地を管轄する法務局に申請します。2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。 申請には、登記申請書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続する人の住民票、固定資産評価証明書などの書類が必要です。
4-3. 株式や自動車の名義を書き換える手順
故人が上場株式を所有していた場合、その名義変更は故人が取引していた証券会社を通じて行います。 まず証券会社に連絡を取り、相続手続きに必要な書類を確認します。 通常、株式を相続する相続人名義の証券口座を開設し、そこへ故人の口座から株を移管する手続きとなります。 遺産分割協議書や戸籍謄本一式などを提出し、名義書換を完了します。自動車を相続した場合は、管轄の運輸支局(普通自動車)または軽自動車検査協会(軽自動車)で移転登録の手続きを行います。 車検証や遺産分割協議書、新しい所有者の印鑑証明書、車庫証明書などが必要になります。
5. 相続手続きで必要になる書類一覧
相続手続きを円滑に進めるためには、様々な必要書類を漏れなく収集することが不可欠です。 手続きの各段階で、被相続人や相続人自身を証明する書類、財産の内容を明らかにする書類など、多岐にわたる書類の提出が求められます。特に、戸籍謄本や印鑑証明書は多くの手続きで必要になる重要な書類です。 ここでは、相続手続きに必要な書類を「被相続人に関するもの」「相続人に関するもの」「財産に関するもの」の3つのカテゴリに分けて、具体的にどのような書類が必要になるかを解説します。
5-1. 被相続人(亡くなった方)に関する必要書類
被相続人に関する書類は、主に死亡の事実と相続関係を公的に証明するために必要となります。 基本となるのは、出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本です。 これらは相続人を確定するために不可欠です。また、最後の住所地を証明する住民票の除票または戸籍の附票も必要になります。 不動産の登記や預貯金の解約など、ほとんどの相続手続きでこの戸籍謄本一式の提出が求められます。 このほか、遺言書がある場合はその原本、相続税申告が必要な場合は故人のマイナンバーがわかる書類も準備します。
5-2. 相続人全員分を準備するべき書類
相続手続きにおいては、相続人全員の協力と書類の準備が不可欠です。 まず、相続人であることを証明するために、全員分の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を用意します。 次に、遺産分割協議書を作成する際や、金融機関、法務局での手続きでは、相続人全員の実印と印鑑登録証明書が必要となります。 本人確認のために運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書のコピーを求められることもあります。
5-3. 財産の種類ごとに求められる書類
相続する財産の種類に応じて、それぞれ個別の書類が必要になります。 預貯金については、故人の預金通帳やキャッシュカード、証書に加え、各金融機関が指定する相続手続依頼書などを準備します。 不動産を相続し登記を行う場合は、対象不動産の登記事項証明書と、固定資産評価証明書が必要です。株式などの有価証券の名義変更では、証券会社所定の相続手続き依頼書や、故人の取引残高報告書などが求められます。 生命保険金を受け取る際には、保険証券や死亡診断書のコピー、保険会社指定の請求書などを提出します。
6. まとめ
相続手続きは、戸籍の収集から財産の名義変更まで多岐にわたり、期限も厳格に定められているため、大変で難しいと感じる方も少なくありません。 自分で手続きを進めるのが困難な場合や、どこに相談すれば良いかわからない場合は、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。 不動産登記は司法書士、相続税申告は税理士、相続人間での争いがある場合は弁護士が主な相談先となります。専門家への依頼費用は、内容によって相場や金額が異なりますので、事前に見積もりを取ることが重要です。 最近ではオンラインで対応するサービスも増え、無料相談を実施している事務所の案内もあります。 手続きには多くの注意点があるため、少しでも不安があれば、自分だけで抱え込まず、専門家に相談することで円滑な解決が期待できます。
- そのお困りごと、ハタスに相談してみませんか?
- 電話で相談する 0566-23-5749
休業日(水曜・日曜・祝日)以外 [9:00~18:00]
