2025/11/25
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相続手続きの流れとは?期限や必要書類、銀行での進め方を解説

相続手続きの流れとは?期限や必要書類、銀行での進め方を解説

相続手続きとは、亡くなった方が残した遺産を、民法で定められた相続人に引き継ぐための一連の流れのことです。実際の手続きは、遺言書の有無の確認に始まり、相続人の確定、財産調査、遺産の分け方を話し合う遺産分割協議、そして預貯金や不動産など各財産の名義変更まで、いくつもの段階に分かれています。なかには法律で期限が決まっている手続きもあり、対応が遅れると不利益を受けてしまうこともあります。本記事では、相続手続きの全体像と具体的な流れ、必要書類、銀行や法務局での進め方を、時系列でわかりやすく解説します。

1. 相続が発生したら最初に行うべきこと

大切な方が亡くなった直後は、葬儀の準備などで心身ともに余裕がないことがほとんどです。これらは、その後の相続手続き全体の方向性を決める基礎となるため、焦らず一つずつ進めることが大切です。

1-1. 遺言書の有無を確認する

相続手続きを始める際、まず確認したいのが遺言書の有無です。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産分割を進めることになるため、手続きの流れが大きく変わります。遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自宅の金庫や机の引き出し、貸金庫、信託銀行など、生前に保管していそうな場所を探します。公正証書遺言は、公証役場に原本が保管されているため、最寄りの公証役場に問い合わせることで有無を確認することができます。一方、自筆証書遺言で法務局の保管制度を利用していないものを見つけた場合は、
家庭裁判所で「検認」手続きが必要となるため、勝手に開封しないよう注意が必要です。

1-2. 戸籍謄本を取得して相続人を確定させる

遺言書の確認と並行して、誰が相続人になるのかを法的に確定する作業も進めます。法定相続人を確定するためには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(改製原戸籍謄本・除籍謄本を含む)をすべて取得します。これにより、現在の配偶者や子のほか、過去の婚姻歴、養子縁組の有無、認知している子の存在なども明らかになります。たとえ相続人が一人だけと思える場合でも、この確認作業は必須です。また、子が先に亡くなっている場合には、その子ども(孫)が代襲相続人となることもあります。相続人が確定したら、相続人全員分の現在の戸籍謄本や、不動産登記に必要となる戸籍の附票も取得しておきましょう。

1-3. どのような遺産があるか財産調査を行う

相続人の確定と同時に、亡くなった方がどのような財産を遺したのかを調査します。相続財産には、預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産も含まれます。通帳やキャッシュカード、不動産の権利証、固定資産税の納税通知書、証券会社からの書類、保険会社からの通知、現金やタンス預金の有無などを一つずつ確認していきます。後から多額の借金が見つかると、相続放棄の判断に影響します。プラスの財産だけでなくマイナスの財産も漏れなく把握することが、相続手続きの大きなポイントです。

2. 【期限別】相続手続きのスケジュールと全体像

相続手続きの中には、法律で期限が厳格に定められているものが多くあります。期限を守らないと、相続放棄ができなくなったり、税金面でペナルティを受けたりするおそれがあります。手続きは、故人の死亡直後から始まり、7日以内、14日以内、3ヶ月、4ヶ月、10ヶ月、1年以内と、時系列に沿って順番に進めていくイメージです。ここでは、主な手続きの期限と内容を整理します。

2-1. 死亡後7日以内:死亡届・火葬許可申請書の提出

故人が亡くなったことを知った日から7日以内に、市区町村役場へ死亡届を提出する必要があります。届出には、医師が作成した死亡診断書または死体検案書を添付します。提出先は、故人の本籍地、死亡地、または届出人の住所地の市区町村役場です。多くの場合、死亡届の提出と同時に火葬許可申請を行い、火葬許可証の交付を受けます。これらの手続きは葬儀社が代行してくれることも多いですが、届出義務者である親族は、期限内に手続きが終わるよう段取りを確認しておきましょう。

2-2. 死亡後14日以内:年金受給停止や健康保険の資格喪失手続き

故人が年金を受給していた場合、そのままにしておくと年金の過払いが発生してしまいます。厚生年金については死亡後10日以内、国民年金については14日以内に、
年金事務所または年金相談センターへ「受給権者死亡届(報告書)」を提出します。あわせて、故人が加入していた健康保険の資格喪失手続きも必要です。国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合は死亡後14日以内に市区町村役場で、会社員などで健康保険組合に加入していた場合は、通常5日以内に勤務先を通じて手続きを行います。

2-3. 3ヶ月以内:相続放棄または限定承認の申述

財産調査の結果、借金などのマイナスの財産が明らかに多い場合は、相続放棄を検討します。相続放棄をする場合、「自分に相続が開始したことを知った日」から3ヶ月以内に、
故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述しなければなりません。期限までに申述しないと、全ての財産と負債を引き継ぐ「単純承認」をしたものとみなされます。また、プラスの財産の範囲内で負債を弁済する「限定承認」という方法もあり、これも同じく3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。

2-4. 4ヶ月以内:故人の所得税の準確定申告

故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告を準確定申告といいます。準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があり、申告と納税の期限も同じ日です。提出先は、故人の死亡時の住所地を管轄する税務署となります。故人が個人事業主であった場合や不動産収入があった場合、給与所得者でも年収2,000万円超などの条件にあてはまる場合に必要になります。場合によっては、源泉徴収されていた税金が還付されることもあります。

2-5. 10ヶ月以内:相続税の申告と納税

相続した財産の総額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税の申告が必要です。申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。申告書は、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。相続税は原則として現金での一括納付が必要です。不動産が含まれる場合は、その評価額を算出するために固定資産税の納税通知書などが役立ちます。期限までに申告・納税をしないと、加算税や延滞税といったペナルティが加わる可能性があるため注意しましょう。

2-6. 1年以内:遺留分侵害額請求の申し立て

遺言や生前贈与によって、法律で保障されている最低限の取り分(遺留分)が侵害された場合、相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。この権利は、相続の開始と、侵害する贈与・遺贈があったことを知った日から1年以内に行使しないと、時効により消滅します。遺留分の割合は民法で定められており、相続人が配偶者や子の場合は、法定相続分の2分の1が目安です。請求は、通常は内容証明郵便などで意思表示を行い、話し合いで解決しない場合は家庭裁判所に調停を申し立てる流れとなります。

3. 遺産の分け方を決める遺産分割協議の進め方

遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が必要です。遺産分割協議の結果は、不動産の登記や預貯金の解約など、個別の名義変更手続きの基礎となるため、とても重要なプロセスです。

3-1. 相続人全員で遺産分割について話し合う

遺産分割協議は、確定した法定相続人全員の参加が必要です。一人でも欠けた状態で行われた協議は無効になってしまいます。財産調査で明らかになったすべての遺産について、誰がどの財産を、どのような割合で相続するかを具体的に話し合います。法定相続分どおりに分ける必要はなく、相続人全員が合意すれば自由な分け方が可能です。話し合いが難航する場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて協議を進める方法もあります。

3-2. 合意した内容を遺産分割協議書として作成する

相続人全員の合意がまとまったら、その内容を遺産分割協議書として書面に残します。この協議書は、不動産の相続登記や銀行での相続手続きなど、様々な場面で提出を求められる重要な書類です。書式に決まりはありませんが、どの財産を誰が相続するのかを特定できるよう明確に記載し、相続人全員が署名のうえ実印を押印します。後のトラブルを防ぐために、遺産分割協議書は相続人の人数分を作成し、各自が1通ずつ保管しておくと安心です。

4. 【財産別】預貯金や不動産などの名義変更手続き

遺産分割協議で、誰がどの財産を相続するかが決まったら、次は各財産の名義変更を行います。名義が故人のままでは、預金を引き出したり、不動産を売却したりすることができません。預貯金、不動産、株式、自動車など、財産の種類ごとに手続きを行う窓口や必要書類が異なります。ここでは主要な財産について、手続きの流れを整理します。

4-1. 金融機関での預貯金の解約・払い戻しの方法

故人名義の預貯金を相続人が引き継ぐ場合、取引のあった銀行などの金融機関で相続手続きを行います。まず金融機関に死亡の事実を伝えると、不正な引き出しを防ぐため、故人の口座は一旦凍結されます。そのうえで、銀行所定の相続届や、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺言書または遺産分割協議書などを提出します。書類が揃えば、預貯金を解約して指定口座へ振り込んでもらうか、窓口で払い戻しを受けることができます。手続きの詳細は金融機関ごとに異なるため、事前に窓口やコールセンターで確認しておくとスムーズです。

4-2. 法務局での不動産の相続登記申請

土地や建物といった不動産を相続した場合は、所有権を故人から相続人に移すための相続登記が必要です。不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。申請時には、登記申請書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続する人の住民票、固定資産評価証明書などが必要です。

4-3. 株式や自動車の名義を書き換える手順

故人が上場株式を保有していた場合、名義変更は取引していた証券会社を通じて行います。まず証券会社に連絡し、必要書類や手続きの流れを確認します。多くの場合、株式を相続する人名義の証券口座を開設し、そこへ故人の口座から株式を移管します。その際、遺産分割協議書や戸籍謄本一式などの提出が求められます。自動車を相続した場合は、管轄の運輸支局(普通車)または軽自動車検査協会(軽自動車)で所有者の名義変更を行います。車検証、遺産分割協議書、新所有者の印鑑証明書、場合によっては車庫証明書などを準備して申請します。

5. 相続手続きで必要になる書類一覧

相続手続きをスムーズに進めるには、必要な書類を事前に整理して集めておくことが大切です。書類は大きく「被相続人に関するもの」「相続人に関するもの」「財産に関するもの」の3つに分けて考えると分かりやすくなります。

5-1. 被相続人(亡くなった方)に関する必要書類

被相続人に関する書類は、主に死亡の事実と相続関係を公的に証明するために使用します。基本となるのは、出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本です。
これにより、相続関係の全体像を明確にすることができます。また、最後の住所地を証明する住民票の除票や戸籍の附票も、不動産の登記や預貯金の解約など多くの場面で必要になります。遺言書がある場合は原本、相続税の申告が必要なときは故人のマイナンバーが分かる書類も準備しておきましょう。

5-2. 相続人全員分を準備するべき書類

相続人に関する書類としては、まず相続人であることを証明するための現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要です。また、遺産分割協議書の作成や金融機関・法務局での手続きでは、相続人全員の実印と印鑑登録証明書が求められます。手続きの種類によっては、運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認書類のコピーも必要になることがあります。

5-3. 財産の種類ごとに求められる書類

相続する財産の種類ごとに、個別の書類が必要です。預貯金については、故人の通帳やキャッシュカード、預金証書のほか、各金融機関の相続手続依頼書などが必要になります。不動産の相続登記では、登記事項証明書や固定資産評価証明書が求められます。株式などの有価証券の名義変更では、証券会社の指定する相続手続依頼書や、故人の取引残高報告書などが必要です。生命保険金を受け取る場合は、保険証券、死亡診断書のコピー、保険会社所定の請求書などを提出します。

6. まとめ

相続手続きは、戸籍の収集や財産調査に始まり、遺産分割協議、各種名義変更まで、多くのステップと期限があるため、ご自身だけで進めるのは大きな負担になることも少なくありません。手続きに不安がある場合や、相続人同士の意見がまとまらない場合には、不動産登記は司法書士、相続税申告は税理士、相続をめぐる争いがある場合は弁護士など、それぞれの専門家に相談することを検討しましょう。近年はオンラインで相談できるサービスや、初回無料相談を行っている事務所も増えています。一人で抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りることで、相続手続きをより円滑に進めることができます。

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