変形地に「30年後も売れる資産」を建てるには

コンパクトアパートか戸建て賃貸か。変形地に「30年後も売れる資産」を建てるには
所有地に建てるなら、コンパクトアパートか戸建て賃貸か。将来を左右する重大な決断です。特に変形地などの制限がある土地では、最大限に収益化するため、アパートVS戸建てならどちらが良いのでしょうか。この記事では、コンパクトアパートと戸建て賃貸の違いやそれぞれの魅力を比較・検証してみます。
「コンパクトアパート」と「戸建て賃貸」、何が違う?
「コンパクトアパート」と「戸建て賃貸」の違いは、大きく、戸数・コスト・敷地柔軟性・供給量の4つです。
詳しく見ていきましょう。
1.戸数
1棟に複数の入居者が入るコンパクトアパートに対し、戸建て賃貸は1棟あたり1世帯のみが入居します。そのため、同じ広さの土地・建物であれば、戸建て賃貸の方が戸数は少なくなります。
2.コスト
戸建て住宅の建築費用は、水回り設備の設置や構造上の理由から、同じ面積のコンパクトアパート一棟を建設するよりも低く抑えられます。
3.敷地柔軟性
整形された広い土地を必要とするコンパクトアパートに対し、戸建て賃貸は狭小地や不整形地にも建築可能です。戸建て賃貸は1棟あたりの建築面積を抑えられるため、土地の形状に柔軟に対応できます。
4.供給量
賃貸用戸建ては、これまで不動産投資の主流であったアパート経営やワンルームマンションと比較して供給量が少ない状況です。
アパートやマンションといった賃貸向けの共同住宅に比べて戸建て賃貸の数はおよそ5分の1以下といわれています。
コンパクトアパートと戸建て賃貸の主な違い
コンパクトアパート | 項目 | 戸建て賃貸 |
---|---|---|
多い | 戸数/棟 | 少ない |
高い | コスト/棟 | 安い |
低い | 敷地柔軟性 | 高い |
多い | 供給量 | 少ない |
コンパクトアパートと戸建て賃貸の魅力は
コンパクトアパートと戸建て賃貸には、どちらも魅力があります。一方で注意点もないとは言えません。それぞれの違いを確かめながら比較してみましょう。
コンパクトアパートの魅力
●利回りが高い・・・1戸当たりのアパート建築費が比較的リーズナブルに抑えられるため、投資額に対する賃料収入の割合が高くなりやすい傾向があります。特に都心部や駅近などの利便性の高いエリアでは、単身者やDINKS層からの安定した賃貸需要が見込めるため、高い入居率を維持しやすいといわれます。空室期間が短ければ、実質的な利回りも向上しやすくなります。周辺の競合物件の賃料相場や空室率などを十分に調査し、適正な賃料設定を行うことが重要となります。税金や管理費などのランニングコストも考慮した上で、実質的な収益性を判断する必要があります。
●空室リスクを分散できる・・・複数の住戸を所有できるコンパクトアパートは、空室が発生した場合でも他の住戸からの賃料収入が維持されるため、賃貸経営における空室リスクを大幅に低減できるという大きな利点があります。これは、安定した収益を長期的に確保する上で非常に重要な要素となります。特に、人口減少やライフスタイルの多様化が進む現代においては、単身者や少人数世帯向けの賃貸需要が高まっており、コンパクトアパートはそのニーズに合致した住居形態と言えるでしょう。
さらに、複数の住戸があることで、入居者の退去時期が分散される可能性が高まります。これにより、一度に全ての住戸が空室になるという最悪の事態を避けることができ、賃料収入の途絶える期間を最小限に抑えることが可能です。また、各住戸の賃料設定を個別に調整できるため、市場の動向や周辺の賃料相場に合わせて柔軟な価格戦略を取りやすいというメリットもあります。
●小さい土地でも建てられる・・・敷地面積が狭い場合でも、コンパクトアパートであれば、その制約された空間を活用し、複数の住戸を設けることで効率的に賃料収入を得て収益化を図ることが可能です。各住戸の面積は小さくとも、機能的な間取りや設備を導入することで、単身者や少人数世帯にとって魅力的な住居を提供できます。また、初期投資額を抑えやすいというメリットもあります。
コンパクトアパートの注意点は
コンパクトアパート経営においては、空室リスクの分散、投資効率の高さといったメリットがある一方で、管理業務が煩雑になるという側面も考慮する必要があります。入居者との契約手続き、家賃の回収、共用部分の清掃、修繕対応など、戸建て賃貸に比べて管理の手間が増えることは否めません。そのため、不動産管理会社に委託するなど、適切な管理体制を構築することが、安定した賃貸経営を維持するための重要なポイントとなります。
また、新築当初は利回りが高く経営できても、古くなれば収益の低下は避けられません。シングルをターゲットにしているコンパクトアパートは、需要が多い分競争も激しくなります。さらにローコストが多いコンパクトアパートでは、リフォームなど修繕にかかる費用も大きくなる傾向があります。
戸数が多いコンパクトアパートは一定のサイズ、規格があるため小回りが利かず、整形地には適しますが変形地には向かない傾向があります。
戸建て賃貸の魅力
●高家賃で空室リスクが低く、管理も楽・・・一般的に、集合住宅であるアパートと比較して、戸建て賃貸は入居者のターゲット層がファミリー層となるため、比較的入居期間が長く、空室リスクを低く抑えることができると考えられます。コンパクトアパートとの違いで見てきたとおり、戸建て賃貸の供給量は少なく、競合も抑えられます。また、共用部分の清掃や管理といった手間が少なく、管理業務の負担が軽減されるというメリットもあります。さらに、入居者による騒音トラブルなども起こりにくいため、オーナー様にとっても安心して賃貸経営を行える可能性が高いと言えるでしょう。
●土地の形状に対し柔軟性・・・戸建て賃貸経営は、狭小地や変形地といった活用が難しい土地でも、その潜在能力を最大限に活かせる魅力的な選択肢です。マンションやアパート経営ではまとまった平坦な土地が必要となることが多い一方、戸建て賃貸は比較的狭い土地でも建設できます。戸建て賃貸は1棟がコンパクトで小回りが利くため、三角地や台形地といった変形地でも柔軟に対応でき、デッドスペースを減らすことができます。そのため、これまで活用を諦めていた住宅地の奥まった場所や不整形な土地も、収益を生む資産に変えることが可能です。
●資産価値と出口戦略・・・戸建て賃貸は、立地や物件の質によっては将来的な資産価値向上が見込めるため、長期的な資産形成に適しています。地価公示価格が継続的に上昇していることも、その背景を裏付けています。売却時の出口戦略も多様で、好条件での取引も期待できます。例えば、良好な関係を築いた入居者への直接販売では、仲介手数料が不要となる場合もあります。また、将来的に更地にする際の解体・処分費用が、アパートやマンションと比較して抑えられる点もメリットです。構造がシンプルなため、撤去作業が比較的容易であるためです。土地付きの戸建ては売却時にも資産価値が評価されやすく、スムーズな売却が期待できます。戸建て賃貸経営の終了時には、第三者への売却、入居者への売却、自己居住といった複数の選択肢があり、アパートやマンションよりも柔軟な対応が可能です。
戸建て賃貸の注意点
戸建て賃貸は高家賃の設定ができ、空室リスクが低く、管理も楽になる一方、複数の住戸を持つコンパクトアパートに比べて利回りは低い傾向があります。
アパート経営では、一部屋が空室でも他の部屋からの収入が見込めますが、戸建て賃貸では一戸空室になると家賃収入が大きく減少します。空室期間が長引くと、ローン返済や維持費の支払いが困難になるリスクが高まるため、適切な入居者募集と管理が重要です。
また、戸建て賃貸は、一般的にアパートやマンションの賃貸に比べて家賃が高めに設定される傾向があります。これは、物件の広さや設備、独立性などが考慮されるためですが、周辺の賃貸相場と比較して家賃が高すぎると、借り手が見つかりにくくなる可能性があります。ターゲットとする入居者層のニーズや経済状況を考慮し、適切な家賃設定を行うことが重要です。また、駅からの距離や周辺環境なども家賃設定に影響を与える要因となります。
変形地に建てるならコンパクトアパートか戸建て賃貸か
所有する土地が整った長方形であれば、効率的な集合住宅、例えばコンパクトアパートなどを建設することは比較的容易です。しかし、都市部などに多く見られる狭小地や、三角形や台形などの変形地の場合、設計上の制約が多くなり、採光や通風の確保が難しくなったり、有効に活用できないデッドスペースが生じたりして、結果として賃貸用の部屋数を十分に確保できないなど、土地の利用用途が大きく制限される傾向があります。
一方、戸建賃貸という選択肢であれば、集合住宅のような画一的な設計ではなく、土地の形状に合わせて柔軟な設計が可能なため、これまで活用が難しいとされてきた狭小地や変形地であっても、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。例えば、L字型の土地であれば、建物をL字型に配置することで、庭を設けたり、各住戸の独立性を高めたりする工夫が可能です。また、間口が狭く奥行きのある土地であれば、縦長のプランニングを採用することで、採光やプライバシーを確保しながら居住空間を確保することができます。
さらに、100坪から150坪といった比較的広めの変形地においては、単一の大型の建物を建てるのではなく、小回りの利く戸建賃貸を複数棟計画的に配置することで、それぞれの建物の配置や向きを最適化し、日当たりや風通しを確保しながら、駐車場や庭などの共有スペースを効率的に配置することが可能になります。これにより、個々の住戸の快適性を高めるとともに、土地全体のデッドスペースを大幅に削減し、収益性の向上に繋げることができます。戸建賃貸は、入居者のターゲット層をファミリー層に絞りやすいというメリットもあり、長期的な安定収入を見込める可能性を秘めています。
将来の資産性~30年後も売れる資産
一棟アパートの場合、売却を検討しても、適当な買い手を見つけるのに苦労し、売却に長期間を要することがあります。特に築30年を経過したアパートは、維持に必要なコストが増大し、投資用不動産としての魅力が低下するため、売却はさらに困難になります。市場の動向や物件の状態によっては、大幅な価格交渉を強いられる可能性もあります。
一方、戸建ての不動産は、相続税対策として有効な選択肢の一つです。相続税対策というと、一般的には収益物件であるアパートやマンションなどの不動産経営を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、戸建て賃貸という形も、賢明な相続税対策となり得るのです。
相続税対策として戸建て賃貸を建設し、それを賃貸物件として市場に貸し出すことで、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けることができます。また、将来的にその戸建てを売却する際には、中古の戸建て物件として売却することも、あるいは投資物件として一棟売りすることも可能です。
さらに、居住者がいる場合でも、賃貸物件として売りに出すことは可能です。その際には、現在入居している方に購入の意思があるかどうかを打診することも考えられます。もし入居者が購入を希望すれば、スムーズな売却が期待できます。複数の入居者がいるコンパクトアパートでは、このようなケースはまず考えられません。
戸建て賃貸は、アパートと比較して入居者の退去頻度が低い傾向にあり、長期にわたって居住する方が多いため、安定した賃料収入が見込めます。その結果、借り手側から「ぜひこの家を買い取りたい」という申し出がある可能性も否定できません。このように、戸建て賃貸は、相続税対策としての有効性だけでなく、将来的な売却の選択肢や、安定した賃貸経営の可能性を秘めていると言えるでしょう。