2025/11/14
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相続税はいくらから?計算方法と基礎控除を早見表でわかりやすく解説【最新版】

相続税とは?いくらから?計算方法と基礎控除を早見表で解説

親などが亡くなった際に発生する可能性がある相続税について、いくらから納税義務が生じるのか、その目安や計算方法が気になる方は多いでしょう。
相続税は国が法律で定めた税金であり、財産の再分配という目的を持っています。
この記事では、納税の要否を判断する基準となる基礎控除や、具体的な税額がわかる早見表を用いて、相続税の基本を網羅的に解説します。

相続税とは、亡くなった人の財産を受け継いだときにかかる税金のこと

相続税とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた財産を、配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだ(相続した)場合に、その財産の価額に対して課される税金です。
相続だけでなく、遺言によって財産を受け取った場合(遺贈)や、生命保険金など(生命保険金や死亡退職金は、相続税法第3条第1項第1号・第2号に定める“みなし相続財産”として課税対象に含まれます)を受け取った場合も課税対象に含まれます。
納税義務者は財産を取得した各相続人となり、取得した財産の価額に応じて税額を負担します。
相続税は、財産の再分配機能とともに、富の偏在を是正する社会政策的目的を有しています(相続税法第1条の趣旨)。

相続税の課税対象となる財産の種類

相続税の課税対象となる財産は、現金や預貯金だけでなく、非常に多岐にわたります。
土地や家、建物といった不動産、株式や投資信託などの有価証券、金などの貴金属、自動車や骨董品といった物も対象です。
これらの財産は、それぞれ定められたルールに基づいて評価額が算出され、土地であれば路線価などが評価の基準となります。
また、被相続人が亡くなったことによって支払われる生命保険金や死亡退職金は、本来の相続財産ではありませんが、相続財産とみなされる「みなし相続財産」として課税対象に含まれます。
非上場株式なども専門的な評価が必要な財産の一例です。

相続財産から差し引ける非課税財産や費用

すべての財産に相続税がかかるわけではなく、遺産総額から差し引くことができる非課税財産や費用が存在します。
代表的な非課税財産として、墓地や墓石、仏壇、仏具など祭祀に関する財産が挙げられます。
また、社会通念上相当と認められる範囲の香典は『相続税基本通達3-21』により非課税とされています。
さらに、被相続人が残した借入金や未払いの税金などの債務は「債務控除」として遺産総額から差し引くことができます。
通夜や告別式にかかった葬儀費用も控除の対象となります。
なお、被相続人が受け取るはずだった入院給付金は、受取人固有の財産とみなされるため、相続税の課税対象にはなりません。

相続税はいくらから発生する?基礎控除額の計算方法

相続税は、受け継いだ遺産の総額が一定の金額を超えた場合にのみ発生します。
この課税されるかどうかのボーダーラインとなる金額を「基礎控除額」と呼びます。
遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、税務署への申告も不要です。
基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で算出されます。
法定相続人の数が多いほど控除額も大きくなるため、相続人が誰で何人いるかを正確に把握することが重要です。
この計算式は、平成27年の税制改正によって変更されたもので、平成27年1月1日以降に開始した相続から新基礎控除額が適用されています。

基礎控除額を超えたら相続税の申告が必要

遺産総額が基礎控除額(相続税法第15条)を超える場合は相続税の申告義務が生じます。(特例を適用せずに計算した課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、そもそも申告の必要はありません。)
各種の特例や控除を適用した結果、最終的な納税額が0円になったとしても、申告そのものは行わなければなりません。
特に、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった税額を軽減できる可能性がある特例は、相続税の申告をすることが適用要件となっています。
申告をしなければこれらの特例は利用できず、本来払う必要のなかった税金を納めることになりかねません。
相続税は国税の一種で、相続税法第27条に基づき、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告書を提出します。

【3ステップでわかる】相続税の計算シミュレーション

相続税の計算は複雑に思われがちですが、3つのステップに分けて考えると流れを理解しやすくなります。
このセクションでは、具体的な計算例を交えながら、実際の算出方法をシミュレーション形式で解説します。
全体の流れは、まず課税対象となる遺産の総額を確定させ、次に法律に基づいた仮の税額を算出し、最後に実際の相続割合に応じて各人の納税額を決定するという手順です。
税率などをまとめた速算表も用いて、具体的な計算過程を見ていきましょう。

ステップ1:課税対象となる遺産の総額を算出する

最初のステップは、相続税の計算の基礎となる課税対象の財産総額を確定させることです。
まず、預貯金、不動産、有価証券といったプラスの財産をすべて洗い出し、それぞれの評価額を合計します。
次に、その合計額から借入金などの債務や葬儀費用、非課税財産を差し引きます。
さらに、相続開始前一定期間内に行われた生前贈与の価額をこの金額に加算します。
この一連の計算によって算出された金額が、相続税の課税対象となる「課税価格の合計額」となります。

ステップ2:法定相続分で按分し相続税の総額を計算する

次に、ステップ1で算出した課税遺産総額を、法律で定められた相続割合(法定相続分)で各相続人が取得したと仮定して分割します。
そして、分割後の各相続人の取得金額に対して、定められた相続税の税率を適用し、それぞれの税額を算出します。
相続税の税率は、取得金額が大きくなるほど税率も高くなる累進課税制度が採用されています。
この段階で算出した各相続人の税額をすべて合計したものが「相続税の総額」となります。
この金額が、相続人全員で負担すべき税金の総額です。

ステップ3:実際の相続割合に応じて各相続人の納税額を確定させる

最後に、ステップ2で計算した「相続税の総額」を、実際の相続割合に応じて各相続人に割り振ります。
実際の相続割合は、遺産分割協議の結果や遺言書の内容によって決まります。
遺言書がある場合は、原則としてその指定に従って財産を取得するため、その割合に応じて税額を負担します。
そして、各相続人に割り振られた税額から、個々の状況に応じた税額控除(例:配偶者の税額軽減、未成年者控除など)を差し引きます。
この最終計算によって、各相続人が実際に納付すべき納税額が確定します。

【遺産総額別】相続税の納税額がわかる早見表

相続税が実際にいくらになるのか、目安を手軽に知りたい方のために、遺産総額別の納税額早見表をご紹介します。
特に遺産総額が1億円、2億円、5億円、10億円といったラインを超えると、納税額も高額になる傾向があります。
ここでは、代表的な相続人の組み合わせ別に、おおよその納税額を示します。
ただし、この表は特定の条件下でのシミュレーションであり、個別の財産状況や適用される特例によって実際の税額は変動するため、あくまで参考としてご活用ください。

相続人が「配偶者と子」の場合

相続人が配偶者と子であるケースは、最も一般的な相続形態です。
この場合、「配偶者の税額軽減」という強力な制度を適用できるため、配偶者の納税額は0円になることがほとんどです。
そのため、実質的に子が相続税を負担することになります。
夫婦間での相続は税制上大きく優遇されていますが、子が納税義務を負うケースが多いことを理解しておく必要があります。
配偶者のみが相続人となる場合とは基礎控除額が異なる点にも注意が必要です。

相続人が「子どものみ」の場合

すでに配偶者が亡くなっているなど、子どもだけが相続人となるケースでは、相続税の負担が重くなる傾向にあります。
配偶者の税額軽減が適用できないため、同じ遺産総額でも「配偶者と子」のケースより納税額が高くなります。
具体的な数字で見るため相続税法別表第一 累進課税(相続税法別表第一、税率10〜55%)を基にした概算の税額だと、例えば、遺産総額が1億円で子どもが2人の場合、1人あたりの納税額は約315万円、合計で約630万円の相続税がかかります。
遺産総額が8,000万円で子どもが1人なら約770万円、3人なら1人あたり約158万円です。
500万円や900万円といった金額になることもあり、遺産総額と子の人数によって50万から数千万円まで税額は大きく変動します。

早見表を利用する際の注意点

早見表は相続税額の目安を把握するのに便利ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。
これらの表は、法定相続人が法定相続分通りに遺産を相続し、かつ「配偶者の税額軽減」以外の特例(小規模宅地等の特例など)を考慮していないという、特定のルールに基づいて作成されています。
実際の相続では、遺産分割の内容や個別の財産評価、適用できる特例の有無によって納税額は大きく変動します。
したがって、早見表の金額はあくまで参考値と捉え、正確な税額を知りたい場合は税理士などの専門家に相談することが不可欠です。

相続税の負担を軽くする6つの控除・特例

相続税には、納税者の事情に配慮し、負担を軽減するための様々な控除や特例が設けられています。
これらの制度を正しく理解し、要件を満たす場合に適用を受けることが、有効な相続税対策の基本です。
活用することで控除額が大きくなり、納税額を大幅に減らせる可能性もあります。
中には最大で納税額が0円になるような強力な特例も存在するため、ここでは代表的な6つの制度について、その内容と効果を解説していきます。

配偶者の税額が大幅に軽減される制度

「配偶者の税額軽減」は、通称「配偶者控除」とも呼ばれ、相続税の負担を大きく軽減できる制度です。
この制度を適用すると、亡くなった人の配偶者が取得した遺産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。
多くのケースで配偶者が納める相続税は0円になります。
ただし、この特例の適用を受けるためには、納税額が0円であっても相続税の申告書を税務署に提出する必要があるため、手続きを忘れないように注意が必要です。

土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、亡くなった人が自宅として住んでいた土地や、事業用に使っていた土地などを相続した場合に、その土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。
遺産総額に占める不動産の割合が高い場合、この特例を適用できるかどうかで納税額に非常に大きな差が生じます。
例えば、評価額1億円の土地が80%減額されれば、2,000万円として相続税を計算できるため、絶大な節税効果があります。
ただし、適用を受けるためには相続する人や土地の利用状況など、細かな要件を満たす必要があります。

未成年者が利用できる税額控除

「未成年者控除」は、財産を相続した人が18歳未満の未成年者である場合に適用される税額控除です。
この制度は、未成年者の今後の生活や教育にかかる負担を考慮して設けられています。
控除額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円として計算されます。
例えば、相続発生時に相続人が10歳だった場合、(18歳-10歳)×10万円=80万円が、その未成年者の納めるべき相続税額から直接差し引かれます。
相続人の中に未成年者がいる場合は、忘れずに適用を検討すべき制度です。

障害を持つ相続人のための税額控除

「障害者控除」は、財産を相続した人が法律で定められた障害者に該当する場合に受けられる税額控除です。
この制度は、障害を持つ方の生活を支援する目的で設けられています。
控除額は、その相続人が満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)で計算されます。
例えば、65歳の特別障害者の方が相続人となった場合、(85歳-65歳)×20万円=400万円が、納めるべき相続税額から直接控除されます。
相続人に障害を持つ方がいる場合は、適用を検討することが重要です。

死亡保険金に適用される非課税枠

被相続人の死亡により支払われる生命保険金(死亡保険金)は、みなし相続財産として課税対象となりますが、一定額までは税金がかからない非課税枠が設けられています。
この非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」という計算式で算出します。
例えば、法定相続人が妻と子2人の合計3人いる場合、500万円×3人=1,500万円までが非課税となります。
受け取った保険金の合計額がこの非課税枠を超えた部分のみが、相続税の課税対象です。
この非課税制度は、遺族の生活保障という生命保険の役割を考慮したものです。

死亡退職金に適用される非課税枠

被相続人の死亡に伴って勤務先から支払われる死亡退職金や功労金なども、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
しかし、生命保険金と同様に、遺族の生活資金としての役割を考慮して非課税の枠が設けられています。
非課税限度額の計算式も生命保険金と同じで、「500万円×法定相続人の数」となります。
法定相続人が3人であれば1,500万円までが非課税となり、それを超える部分だけが課税価格に算入されます。
この制度を活用することで、課税対象となる遺産の総額を抑える効果が期待できます。

知っておきたい相続税の注意点

相続税の手続きを進める上では、基本的な計算方法や控除制度の理解に加えて、いくつか注意すべきポイントがあります。
これらの点を見落とすと、想定外の税負担が発生したり、将来的な問題につながったりする可能性があります。
ここでは、税額が加算されるケースや、長期的な視点での対策の重要性など、特に知っておきたい注意点を解説します。
不明な点があれば、早めに専門家へ相談することも検討しましょう。

相続税が2割加算される対象者とは?

相続税には、特定の人が財産を取得した場合に、納税額が2割増しになる「2割加算」というルールがあります。
この対象となるのは、亡くなった人の配偶者と一親等の血族(子や親)以外の人です。
具体的には、被相続人の兄弟姉妹や、代襲相続ではない孫が遺産を相続した場合などが該当します。
例えば、孫が遺言によって財産を受け取った場合、その孫が納めるべき相続税額は、本来の計算額の1.2倍になります。
ただし、子が先に亡くなっていて孫が代襲相続する場合は対象外です。
また、被相続人の養子は一親等の血族とみなされるため、原則として2割加算の対象にはなりません。

二次相続まで見据えた対策の重要性

相続を考える際には、目先の一次相続だけでなく、その次の二次相続まで見据えた対策が非常に重要です。
一次相続とは、例えば父親が亡くなり、母親と子どもが相続するケースを指します。
この時、配偶者の税額軽減を最大限活用して母親が多く相続すれば、一次相続の税負担は軽くなります。
しかし、その結果母親の財産が増え、次にその母親が亡くなった際の二次相続では、配偶者の税額軽減が使えないうえに法定相続人も減るため、子どもたちの税負担が著しく重くなる可能性があります。
したがって、一次相続の段階から、家族全体のトータルの税負担が最も軽くなるような遺産分割を検討することが求められます。

相続税の申告と納付の期限はいつまで?

相続税の申告と納付には、厳格な期限が定められています。
この支払期限を過ぎてしまうとペナルティが課されるため、相続が発生したら速やかに手続きの準備を始めることが重要です。
申告期限および納付期限は、原則として「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」とされています。
この10か月という期間内に、遺産の全容を把握し、財産評価を行い、遺産分割協議をまとめ、申告書を作成して提出し、納税までをすべて完了させる必要があります。
期限に間に合わせるためには、計画的な進行が不可欠です。

まとめ

相続税は、基礎控除額を超える遺産がある場合に申告と納税が必要です。
申告・納付の期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内と定められており、この手続きを怠ると無申告加算税や延滞税が課されます。
相続税の課税対象を抑える可能性のある方法として、年間110万円までの暦年贈与や相続時精算課税制度の活用が挙げられますが、相続税法第19条の2に基づき、2024年以降段階的に『相続開始前7年以内』まで拡大され、2027年1月以降の相続から全面適用予定であるため、2027年1月からは相続開始前7年以内(段階的に延長)の贈与は持ち戻しの対象となる点に注意が必要です。
相続税法施行令第4条に基づき、「3年以内分割見込書」を税務署に提出すれば、配偶者控除・小規模宅地等の特例の適用を将来の分割完了時まで留保できます。
これらの制度を活用することで節税対策を行っていくことは可能ですが、遺贈や養子縁組なども税額に影響を与えるため、複雑な場合は専門家への相談が賢明です。

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