2025/11/07

不動産相続評価の計算方法|土地・建物の評価額と相続税

不動産相続評価の計算方法|土地・建物の評価額と相続税

不動産を相続した場合、現金や預貯金とは異なり、その価値を「相続税評価額」として算出する必要があります。
この評価額は相続税の金額を決定する上で非常に重要な基準となります。

不動産の評価方法は土地と建物で異なり、それぞれ定められたルールに基づいて計算しなくてはなりません。
この記事では、不動産の相続税評価額の基本的な考え方から、土地と建物の具体的な計算方法、適用できる特例、注意点までを網羅的に解説します。

不動産の相続税評価額とは?時価とは異なる計算が必要な理由

不動産を相続した場合、その価値は「相続税評価額」として算出し、相続税の課税基準となります。
相続税法第22条および国税庁「財産評価基本通達」に基づき、土地・建物を現況により評価するのが原則です。
相続税評価額は、市場実勢価格(時価)と必ずしも一致せず、地域・形状・権利関係により異なります。
一般的な傾向として7~8割程度となる場合が多いが、個別評価により異なるため個別に通達に従って計算する必要があります。

【土地】相続税評価額の計算方法|2つの方式を解説

土地の評価は、路線価方式(路線価×地積×各種補正)または倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)で行います。
どの方式を用いるかは、国税庁が毎年公表する「路線価図・評価倍率表」で定められており、原則として路線価地域は路線価方式、それ以外は倍率方式です。評価は現況主義(国税庁 財産評価基本通達 1)に基づく。ただし登記上地目と現況が異なる場合は現況を優先することになります。
市街地にある宅地の多くは路線価方式が、郊外や農村部など路線価が定められていない地域では倍率方式が適用されます。
相続した土地がどちらの方式で評価すべきかを正しく把握し、それぞれのルールに従って計算を進めることが重要です。

路線価方式での評価額の求め方

路線価方式は、国税庁が定める路線価に基づいて土地の評価額を計算する方法です。
路線価とは、主要な道路に面する土地1平方メートルあたりの価格のことで、毎年公表されます。
基本的な計算方法は、土地が面している道路の路線価に、その土地の面積を乗じて算出します。
形状・間口・奥行・角地・不整形地等に応じて奥行価格補正率・間口狭小補正率・二方路線影響加算率などを適用します。
補正の選択・重複適用の可否には詳細なルールがあるため、
通達の該当条項・別表の確認が必要です。

倍率方式での評価額の求め方

倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地を評価する際に用いられる計算方法で、地目(宅地・田・畑・山林 等)と現況に応じた倍率を用います。
この方法では、まず対象となる土地の固定資産税評価額を確認します。
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されているため、比較的簡単に把握できます。
同一自治体でも地目により倍率が異なるため、固定資産税評価額の確認とあわせ、国税庁の評価倍率表(当該年分)で適用倍率を特定します。
この評価倍率は国税庁のウェブサイトで公開されています。
最終的な相続税評価額は、その土地の固定資産税評価額に、定められた評価倍率を乗じることで算出されます。
路線価方式に比べて計算はシンプルです。

土地の利用状況によって評価額が減額されるケース

土地の相続税評価額は、その土地の利用状況によって減額されることがあります。
例えば、被相続人が所有する土地を第三者に貸していた場合(貸宅地の場合)や、
所有する土地の上にアパートなどを建てて賃貸していた場合(貸家建付地の場合)について、
それぞれ、借地権・借家権という第三者の権利により自由利用が制約されるため、その制約を反映した評価方法が定められています(国税庁 財産評価基本通達 24・25)。
評価の引下げは「減額特例」ではなく、権利関係に応じた別基準である点に留意します。

【建物】相続税評価額の計算方法|固定資産税評価額が基準

建物の評価は、原則として固定資産税評価額=相続税評価額です。賃貸中の建物(貸家)は、固定資産税評価額×〔1−(借家権割合30%×賃貸割合)〕で評価します(国税庁 財産評価基本通達 通達25)。
賃貸割合は課税対象床面積で算定します。
この金額は、毎年市区町村から送付される固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書で確認することが可能です。
したがって、建物の評価においては、土地のように複雑な補正計算などを行う必要は基本的にありません。

自分で使用している建物の評価額

固定資産税評価額は、毎年春ごろに市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書で確認できます。
もし書類を紛失してしまった場合は、不動産が所在する市区町村の役所や都税事務所で「固定資産評価証明書」を取得することで金額を把握できます。

賃貸している建物の評価額

被相続人がアパートやマンションなどの賃貸不動産を所有し、第三者に貸し出していた場合、その建物の評価は権利関係を考慮して調整されます。
これは、入居者が持つ「借家権」によって建物の所有者の権利が制約されていると考えられるためです。
具体的な計算式は、「固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)」となります。
借家権割合は全国一律30%と定められていますが、借地権割合は地域・路線価ごとに異なります。
賃貸割合とは、建物の課税対象となる床面積のうち、実際に賃貸されている部分の面積が占める割合のことです。
この計算により、自分で使用している建物と比較して評価額が低く抑えられます。

相続税の負担を大幅に軽減できる「小規模宅地等の特例」

小規模宅地等の特例は、相続税の計算において非常に影響の大きい制度で、小規模宅地等の特例租税特別措置法69条の4に基づき、居住・事業・貸付の各宅地等について、一定の面積上限・減額割合で評価を減額できます(例:居住用330㎡まで80%減等)。
適用要件は相続人の属性・居住継続・持分・申告手続等が厳格で、近年の改正で要件が見直されているため、最新の改正・通達・質疑応答事例をよくよく確認する必要があります。

特例を適用するための主な要件

小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)は、被相続人の居住用・事業用・貸付事業用の宅地について、一定の要件を満たす場合に評価額を減額できる制度です。
たとえば、特定居住用宅地等は最大330㎡まで80%減、特定事業用宅地等は400㎡まで80%減、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減とされます。
適用には、相続人の居住・事業継続・申告期限内の手続きなどの要件を満たす必要があり、令和5年度改正で一部緩和・明確化されています。
最新の国税庁通達・質疑応答事例を確認することが推奨されます。
相続人が2人以上いるケースで、それぞれが要件を満たせば、土地の持分に応じて特例の適用を受けることも可能です。

土地の種類別にみる評価額の減額割合

小規模宅地等の特例では、相続した土地の利用状況によって、適用できる面積の上限と評価額の減額割合が異なります。
被相続人の自宅敷地であった「特定居住用宅地等」の場合、330平方メートルまでの部分について評価額が80%減額されます。
被相続人が事業を営んでいた土地である「特定事業用宅地等」も、400平方メートルを限度に80%の減額が適用されます。
一方で、アパートや貸駐車場など不動産貸付事業に使われていた「貸付事業用宅地等」の場合は、200平方メートルを限度に評価額が50%減額されます。
どの種類の土地として特例を適用するかが、相続税額に大きく影響します。

不動産相続評価で計算を間違えないための注意点

不動産、特に土地の相続税評価額の計算は非常に複雑で、専門的な知識がないと間違いやすいポイントが数多く存在します。
評価額の計算を誤ってしまうと、本来納めるべき相続税よりも多く支払ってしまったり、逆に少なく申告してしまい後から税務署に指摘され、延滞税などのペナルティが課される問題に発展したりする可能性があります。
正確な申告を行うためには、評価の仕組みを正しく理解し、慎重に計算を進めることが不可欠です。

評価額の計算は専門家への依頼がおすすめ

不動産の相続税評価、とりわけ土地の評価は、路線価の補正や土地の利用状況の判断など、専門的な知識と経験を要する場面が多くあります。
個人で正確な評価額を算出するのは困難な場合が少なくありません。
計算ミスは税額に直結するため、相続税に精通した税理士などの専門家への依頼が賢明です。
専門家であれば、複雑な土地評価を正確に行うだけでなく、小規模宅地等の特例をはじめとする各種の税制優遇が適用できるかどうかも適切に判断してくれます。
多くの税理士事務所では無料相談を実施しているため、まずは一度問い合わせてみるのがよいでしょう。

不動産相続評価に関するよくある質問

不動産は遺産の中でも評価額が大きくなりがちで、計算方法も複雑なため、相続手続きを進める上で多くの疑問が生じます。
特に、評価額の計算を自分で行うべきか、どのような書類を準備すればよいのか、また戸建てとは異なるマンションの場合はどう計算するのか、といった点は多くの方が抱く疑問です。
ここでは、不動産相続評価に関する頻出の質問について、分かりやすく回答していきます。

Q. 相続税評価額の計算は自分でできますか?

相続税評価額の計算を個人で行うこと自体は可能です。
特に建物のみの評価であれば、固定資産税評価額を確認するだけで済むため、比較的容易です。
しかし、土地の評価は複雑なケースが多く、例えば不整形地や無道路地などの評価には専門的な補正計算が必須となります。
もし評価額を誤って過少に申告すると、税務調査で指摘され追徴課税を受けるリスクがあります。
逆に過大に評価してしまうと、納め過ぎた税金は自ら更正の請求をしない限り戻ってきません。
将来の売却時の税金計算にも関わるため、正確性を期すなら専門家への相談が安全です。

Q. 評価額の計算に必要な書類は何ですか?

不動産の相続税評価額を計算するためには、いくつかの公的な書類を準備する必要があります。
まず、対象不動産の正確な情報を確認するために、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「公図」「地積測量図」などを取得します。
評価の基礎となる固定資産税評価額を確認するためには、市区町村から送付される「固定資産税の納税通知書」が必要です。
もし紛失している場合は、市区町村役場で「固定資産評価証明書」を発行してもらいます。
また、被相続人が所有していた不動産をすべて把握したい場合には、市区町村役場で「名寄帳」の写しを取得すると一覧で確認できて便利です。

Q. マンションの相続税評価額の計算方法は?

マンションの相続税評価額は、「建物部分(専有部分)」と「土地の権利(敷地権)」に分けて、それぞれを評価した後に合算して算出します。
建物部分の評価額は、戸建ての建物と同様に、固定資産税評価額がそのまま評価額となります。
一方、土地の権利の評価は、まずマンションが建っている敷地全体の評価額を路線価方式または倍率方式で計算します。
次に、その全体評価額に対して、各部屋の所有者が持つ「敷地権割合」を乗じることで、その部屋が所有する土地部分の評価額を求めます。
敷地権割合は登記事項証明書で確認できます。

まとめ

不動産の相続税評価は、財産評価基本通達に基づき、土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を基準に算定します。
小規模宅地等の特例や貸家建付地などの評価方法を誤ると、課税額や控除額に大きな影響が及ぶため注意が必要です。
相続税の申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内(相続税法第27条)。
評価や申告の判断に迷う場合は、税理士等の専門家に相談し、誤りによる延滞税・過少申告加算税のリスクを防ぐことが重要です。
過少申告は加算税・延滞税(国税通則法65条等)の対象となり得ます。過大申告時は更正の請求(同23条の2)により是正を検討します。
なお、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されるため、生前の対策も考慮に入れることが求められます。

そのお困りごと、ハタスに相談してみませんか?
電話で相談する 0566-23-5749

休業日(水曜・日曜・祝日)以外 [9:00~18:00]