不動産資産運用(不動産投資)のデメリットとは?失敗しないための注意点
不動産資産運用(不動産投資)のデメリットとは?失敗しないための注意点
不動産投資は安定した収益が期待できる一方で、初心者にとっては未知のリスクやデメリットも存在します。
メリットだけに目を向けて安易に始めると、想定外の事態に直面しかねません。
不動産資産運用を成功させるためには、事前にデメリットを正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
この記事では、不動産投資の基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、そして失敗を避けるためのポイントまでを網羅的に解説します。
不動産資産運用で利益を得る2つの仕組み
不動産資産運用における利益の源泉は、大きく分けて2種類存在します。
一つは保有している収益物件から定期的に得られる家賃などの収益(インカムゲイン)、もう一つは購入した物件を売却することで得られる売却益(キャピタルゲイン)です。
どちらの利益を重視するかによって、選ぶべき物件や資産戦略は異なります。
それぞれの特徴を理解し、自身の投資スタイルや目標に合わせて収益のパターンをシミュレーションすることが、運用の第一歩となります。
毎月の家賃収入で安定した利益を得る(インカムゲイン)
インカムゲインとは、マンションやアパート、賃貸オフィスなどの収益物件を所有し、第三者に貸し出すことで得られる継続的な家賃収入を指します。
入居者がいる限り毎月安定した収入が見込めるため、長期的な資産形成や私的年金の代わりとして注目されています。
例えば、総額1億円の物件を運用する場合でも、空室さえなければ定期的なキャッシュフローを生み出し、ローン返済や経費を差し引いた額が手元に残ります。
景気の変動に左右されにくく、需要・賃料・空室・金利等の条件次第で相対的に安定しやすい側面があります。それが収益不動産の最大の魅力であり、多くの投資家がこのインカムゲインを主目的として不動産投資を始めています。
物件を売却して一度に大きな利益を得る(キャピタルゲイン)
キャピタルゲインとは、購入した不動産の価値が上昇したタイミングで売却することによって得られる売買差益のことです。
例えば、2,000万円で購入した物件が2,500万円で売れれば、500万円の利益を得られます。
高度経済成長期にあがり続けた不動産価格が土地神話を生んだこともあり、バブル期には多くの人がこのキャピタルゲインを狙っていましたが、バブルを経て不動産自体の価値が考慮されるようになったことで最近ではインカムゲインを重視の傾向が見受けられます。
将来的に周辺地域の再開発やインフラ整備が見込まれるエリアの物件を安価な時期に購入できれば、大きな利益を得る可能性がありますが、市場の動向を正確に予測する必要があり、インカムゲインに比べて不確実性が高い手法といえます。
不動産資産運用を始める前に知っておきたい4つのメリット
不動産資産運用には、家賃収入以外にも多くのメリットがあります。
少ない自己資金で大きな投資を始められるレバレッジ効果や、相続対策をはじめとする税制上の優遇措置などがその代表例です。
また、生命保険の代わりとなる効果や、インフレによる資産の目減りを防ぐ役割も担います。
これらのメリットを最大限に活用することで、より効果的な資産形成が可能となり、将来にわたる経済的な安定基盤を築くことにつながります。以下でそれぞれの効果について具体的に見ていくことにしましょう。
自己資金が少なくても始められるレバレッジ効果
不動産投資の大きなメリットの一つに、金融機関からの融資を利用できる「レバレッジ効果」があります。
これは「てこの原理」のように、少ない自己資金を元手に、それを大きく上回る金額の物件を購入し、運用できる仕組みです。
例えば、自己資金300万円でも、2,700万円の融資を受けることで3,000万円の物件オーナーになれます。
株式投資や投資信託では、基本的に保有資産の範囲内でしか投資できないのに対し、不動産投資では他人資本を活用して効率的に資産を拡大できる可能性があります。
これにより、早期に大きなリターンを狙うことも可能になります。
相続税や所得税の節税効果が期待できる
不動産は現金や有価証券と比較して、相続税評価額を低く抑えられる特徴があります。
現金1億円を相続する場合、評価額はそのまま1億円ですが、不動産の場合は路線価や固定資産税評価額を基に算出されるため、時価よりも低い評価額となることが一般的です。
これにより相続税の負担を軽減できます。
また、不動産所得が赤字になった場合は、給与所得など他の所得と損益通算することで、所得税や住民税の還付を受けられる可能性(厳密にいうと、原則損益通算の対象ですが、土地取得に係る負債利子など例外を受けられる可能性)があります。
特に減価償却費は、実際の支出を伴わずに経費として計上できるため、節税効果が期待できる仕組みです。
団体信用生命保険で万が一の備えになる
不動産投資ローンを組む際には、多くの場合で団体信用生命保険(団信)への加入が求められます(但し、フラット35のように商品により任意のものもあります)。
これは、ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金によって残りのローンが全額弁済される仕組みです。
残された家族はローン返済の負担なく、収益を生むマンションなどの資産を引き継ぐことができます。
家賃収入はそのまま生活費や子どもの教育費などに充てられるため、生命保険と同様の役割を果たします。
新たに生命保険に加入したり、既存の保険を見直したりするきっかけにもなり、万が一の事態に備えた資産形成手法として機能します。
インフレによる資産価値の目減りを防げる
インフレとは、物価が上昇し、相対的にお金の価値が下がる経済現象です。
預貯金などの現金資産は、インフレが進むと実質的な価値が目減りしてしまいます。
一方、不動産のような現物資産は、その現物資産の市場での価値で都度評価が行われるため、インフレに伴ってその価値が上昇する傾向があります。
収益物件から得られる収益についても家賃も物価の上昇に合わせて見直しが掛かる可能性があるため、インフレリスクへの備えとして有効です。
将来的なインフレを想定し、資産ポートフォリオの一部に不動産物件を組み込むことで、保有資産全体の価値を維持・向上させる効果が期待できます。次の段では収益不動産を用いた不動産資産運用の場合に注意すべき点を4つのデメリットとして解説していきます。
不動産資産運用で注意すべき4つのデメリット
不動産資産運用には多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットやリスクも存在します。
代表的なものとして、収益の根幹を揺るがす「空室リスク」や、経年劣化に伴う「修繕費用の発生」が挙げられます。
また、ローン金利の上昇による返済負担の増加や、地震・火災といった自然災害による資産価値の低下も考慮しなければなりません。
これらのリスクを事前に理解し、対策を立てることが安定した運用の鍵となります。
入居者が決まらない空室リスク
不動産投資における最大のリスクは、入居者が見つからず家賃収入が途絶える空室リスクです。
空室期間中もローン返済や管理費、修繕積立金などの支払いは続くため、キャッシュフローが悪化し、自己資金を持ち出す事態に陥る可能性があります。
このリスクを回避するためには、賃貸需要の高いエリアや駅からのアクセスが良い物件を選ぶことが基本です。
また、入居者募集に強みを持つ管理会社を選定し、適切な営業活動を展開してもらうことも重要です。
周辺の家賃相場をリサーチし、競争力のある賃料設定や魅力的な内装リフォームを行うなどの対策も求められます。
建物の老朽化による修繕費用の発生
建物は時間とともに老朽化するため、定期的な修繕やメンテナンスが不可欠です。
給湯器やエアコンなどの設備交換は十数年ごと、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕は10年〜15年周期で発生し、その都度まとまった費用がかかります。
これらの費用を想定せずに収支計画を立てると、突然の出費に対応できず資金繰りが悪化する可能性があります。
分譲マンション(区分所有マンション)の場合は管理組合が修繕積立金を徴収しますが、計画の見直しにより積立金が値上がりすることもあります。逆に、個人や管理会社が所有する賃貸マンションでは賃料収入から修繕積立金を積み立てて行く必要があります。
信頼できる管理会社と連携し、長期的な修繕計画を立てて計画的に資金を準備しておくことが求められます。
ローン金利の上昇による返済額の増加
不動産投資ローンの多くは変動金利で組まれるため、将来的に市場金利が上昇すると、それに伴ってローン返済額も増加するリスクがあります。
返済額が増えれば毎月のキャッシュフローが圧迫され、収支が赤字に転落する可能性も否定できません。
特に、購入時にギリギリの返済計画を立てていると、わずかな金利上昇でも運用に大きな影響を及ぼします。
対策としては、金利が上昇しても耐えられるように、自己資金に余裕を持たせておくことが挙げられます。
また、金利が低いうちに繰り上げ返済を進めて元本を減らしたり、固定金利への借り換えを検討したりすることも有効な手段です。
地震や火災など自然災害による資産価値の低下
日本は地震や台風、水害などの自然災害が多い国であり、これらの災害によって物件が倒壊・損壊するリスクは常に存在します。
建物に被害が及ぶと、修繕費用がかかるだけでなく、資産価値そのものが大幅に低下したり、最悪の場合はゼロになったりする可能性もあります。
こうしたリスクに備えるためには、火災保険や地震保険への加入が強く推奨されます。
ただし、地震保険で補償されるのは損害額の一部である点には注意が必要です。
購入前にハザードマップを確認して物件所在地の災害リスクを把握したり、新耐震基準を満たした頑丈な建物を選んだりすることも、重要なリスク対策となります。
不動産資産運用でよくある3つの失敗事例
不動産資産運用では、知識不足や準備不足が原因で失敗に至るケースが少なくありません。
特に多いのが、支出の見積もりが甘くキャッシュフローが赤字化する事例や、物件の価値を正しく評価できずに高値で購入してしまう事例です。
また、運用を任せる管理会社の選定を誤り、空室が埋まらないといったトラブルも頻発します。
これらの典型的な失敗事例から学ぶことで、自身が同じ轍を踏むリスクを減らすことができます。
収支計画が甘く毎月のキャッシュフローが赤字になる
不動産会社の提示する表面利回りの高さだけを見て、安易に物件購入を決定してしまうのは典型的な失敗パターンです。
実際の運用では、家賃収入からローン返済だけでなく、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料、さらには入居者退去時の原状回復費用や広告料など、さまざまな経費が差し引かれます。
これらのランニングコストや突発的な支出を考慮せずに収支計画を立てると、手元にお金が残らないばかりか、毎月の収支が赤字になる事態に陥ります。
購入前に実質利回りを算出し、空室発生なども想定した厳密なシミュレーションを行う必要があります。
物件の価値を見誤り相場より高値で掴んでしまう
不動産投資の成否は、いかに優良な物件を適正価格で購入できるかにかかっています。
しかし、初心者の中には、物件の立地や周辺環境、将来性などを十分に調査せず、営業担当者の言葉を鵜呑みにして相場よりも割高な価格で購入してしまうケースが見受けられます。
このような「高値掴み」をしてしまうと、期待した利回りが得られないだけでなく、将来売却する際に購入価格を大幅に下回り、大きな損失を被るリスクが高まります。
複数の物件を比較検討し、公示価格や路線価、周辺の取引事例などを参考に、自身で物件価値を判断する目を養うことが不可欠です。
信頼できない管理会社を選んでしまい運用が滞る
不動産投資、特に区分マンション投資は、管理会社に運営を委託するのが一般的です。
しかし、この管理会社の選定を誤ると、運用がスムーズに進まなくなる可能性があります。
例えば、入居者募集の営業力が弱く、空室期間が長引いてしまったり、入居者からのクレーム対応が遅く、トラブルに発展したりするケースです。
また、ずさんな管理によって建物の劣化が進み、資産価値の低下を招くこともあります。
管理会社のこれまでの実績や入居率、担当者の対応などを複数の会社で比較検討し、長期的に信頼できるパートナーを選ぶことが、安定した運用のための重要な要素となります。
不動産資産運用で失敗しないための4つのポイント
不動産資産運用で成功を収めるためには、メリットだけでなくデメリットや失敗事例を深く理解し、それらを踏まえた上で慎重に行動することが求められます。
具体的には、目先の利益にとらわれず長期的な視野で計画を立てること、利回りの数字だけで判断せずリスクとのバランスを見極めることなどが重要です。
また、信頼できる不動産会社をパートナーに選び、購入後のコストまで含めた資金計画を立てることが、失敗を避けるための鍵となります。
短期的な利益を追わず長期的な視点で運用計画を立てる
不動産投資は、株式のデイトレードのように短期で大きな利益を得る投資手法ではありません。
家賃収入をコツコツと積み上げていく長期的な運用が基本となります。
そのため、購入から数年で売却して利益を得ようとするなど、短期的な視点で計画を立てると、市況の悪化などで思わぬ損失を被る可能性があります。
購入時には、少なくとも10年、20年といった長期的なスパンで収支シミュレーションを行い、ローンの完済や最終的な売却(出口戦略)までを見据えた運用計画を策定することが重要です。
市況の変動に一喜一憂せず、どっしりと構える姿勢が求められます。
利回りだけでなくリスクとのバランスを考慮して物件を選ぶ
広告などで目にする「高利回り」という言葉は非常に魅力的ですが、利回りの高さとリスクは比例する傾向にあります。
例えば、地方の築古物件は価格が安いため表面利回りが高くなりがちですが、空室リスクや修繕費用の増大、売却の難しさといったリスクを抱えています。
一方で、都心部の築浅物件は利回りが低めでも、賃貸需要が安定しており資産価値が下がりにくいというメリットがあります。
表面的な数字に惑わされず、なぜその利回りなのかという背景を分析し、立地、築年数、管理状態などを総合的に評価して、自身が許容できるリスクとのバランスを考慮した物件選びが肝心です。
複数の不動産会社を比較し信頼できるパートナーを見つける
不動産投資を始めるにあたり、不動産会社は物件の紹介から購入、その後の管理までをサポートしてくれる重要なパートナーです。
しかし、会社によって得意な分野や取り扱う物件、提案内容も異なります。
1社の情報だけを鵜呑みにせず、必ず複数の不動産会社に相談し、それぞれの提案内容や担当者の知識、対応の誠実さなどを比較検討することが不可欠です。
メリットだけでなく、リスクについてもきちんと説明してくれるか、長期的な視点でサポートしてくれる姿勢があるかを見極め、信頼に足るパートナーを見つけ出すことが成功への近道となります。
購入後にかかる維持管理費や税金も事前に把握しておく
不動産投資の支出は、物件の購入費用とローン返済だけではありません。
運用開始後には、管理費や修繕積立金、固定資産税・都市計画税、火災保険料といった維持管理費が継続的に発生します。
また、入居者が入れ替わる際には、原状回復費用や新たな入居者を募集するための広告料も必要です。
これらのランニングコストを事前にリストアップし、年間の支出額を正確に把握した上で収支シミュレーションを行わなければ、手残りが想定より大幅に少なくなる可能性があります。
購入前に、どのような費用が、いつ、どのくらいかかるのかを詳細に確認しておくことが大切です。
不動産資産運用はこんな人におすすめ
不動産資産運用は、その特性から特定の人にとって非常に有効な資産形成手段となり得ます。
例えば、将来のインフレに備えて現金以外の資産を持ちたいと考えている人や、公的年金に不安を感じ、安定した私的年金を確保したい人には適しています。
また、管理を専門会社に委託できるため、本業で多忙な会社員が副収入を得る手段としても注目されています。
自身のライフプランや資産状況と照らし合わせて、不動産投資が適しているか判断することが重要です。
インフレに備えて現物資産を持ちたい人
インフレが進行すると、現金の購買力は低下します。
例えば、今まで100円で買えていたものが110円に値上がりすれば、100円というお金の価値は実質的に目減りしたことになります。
預貯金を中心に資産を保有している場合、インフレによって資産価値が実質的に減少するリスクを抱えることになります。
これに対し、土地や建物といった不動産は「現物資産」であり、インフレ時にはその価値も物価とともに上昇する傾向があります。
家賃も同様に上昇する可能性があるため、インフレによる資産価値の目減りを防ぐリスクヘッジ手段として、不動産を保有することは有効な選択肢です。
将来の年金不安に備えて収入源を確保したい人
少子高齢化が進む日本では、将来的に公的年金の受給額が減少したり、受給開始年齢が引き上げられたりする可能性が指摘されています。
公的年金だけに頼った老後の生活設計に不安を感じ、自ら資産を形成して備えたいと考える人にとって、不動産投資は有力な選択肢の一つです。
現役時代にローンを完済しておけば、定年退職後には家賃収入の大部分を生活費に充てることができ、安定した私的年金として機能します。
長期にわたって継続的な収入源を確保できるため、ゆとりあるセカンドライフを送るための経済的基盤となり得ます。
本業に集中しながら副収入を得たい人
不動産投資は、物件の管理業務を専門の管理会社に委託できるため、オーナー自身が煩雑な実務に追われる必要がほとんどありません。
入居者募集から家賃の集金、クレーム対応、退去時の手続きまで、一連の業務を任せることが可能です。
そのため、本業が忙しく、副業に多くの時間を割けない会社員でも取り組みやすいという特徴があります。
他の投資と比べて日々の値動きに一喜一憂する必要も少なく、一度軌道に乗れば安定した副収入を得ながら、本業に集中できるというメリットは、多忙な現代の会社員にとって大きな魅力です。
まとめ
不動産資産運用は、レバレッジ効果や節税、安定したインカムゲインなど多くのメリットを持つ一方で、空室や金利上昇といった無視できないデメリットも内包しています。
成功の鍵は、これらのリスクを事前に正しく認識し、長期的な視点で緻密な計画を立てることです。
表面的な利回りに惑わされず、複数の情報を比較検討し、信頼できるパートナーと共に慎重に物件を選ぶ姿勢が求められます。
リスク対策を徹底することが、不動産投資を安定した資産形成へとつなげます。
補足
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、将来の収益・節税効果・物件価格の上昇を保証するものではありません。
実際の投資判断・税務・契約内容については、必ず専門家(不動産会社・税理士・金融機関等)にご確認ください。
本記事の記載内容は執筆時点の法令・制度に基づいており、将来的に変更される可能性があります。
