不動産投資で本当に大事なのは「相続対策」と「株価対策」|フロー思考からストック思考へ

不動産投資で本当に大事なのは「相続対策」と「株価対策」
【はじめに】
近年、キャッシュフロー(CF)最大化をうたう不動産投資手法が人気を集めています。これは減価償却メリットを前面に出し、短期での手残り資金の最大化を狙うものです。
しかし、地主や経営者層にとって本当に重要なのは、「いかに資産を守り、次世代に承継するか」という点です。つまり、相続対策や株価対策といった、ストック視点の資産戦略が重要なのです。特に地主や経営者の方々にとって、目先のキャッシュフロー最大化だけを追求するのではなく、将来を見据えた資産戦略、つまり「ストック思考」が重要になっています。これは、資産を守り、次世代へ承継していくという視点に立った考え方と言えるでしょう。
【なぜ今、CF最大化思考に注意すべきなのか?】
従来の不動産投資は、いかに多くの賃料収入を得るかというキャッシュフローの最大化に焦点が当てられてきました。しかし、経済状況の変化や社会構造の成熟に伴い、このキャッシュフロー思考だけでは対応できない課題が顕在化し、長期的な資産価値の維持・向上を目指す「ストック思考」の重要性が高まっています。
短期的なキャッシュフローの最大化を目指す投資手法には、以下のようないくつかのリスクが潜んでいます。
減価償却期間終了後、手残りが急減する
減価償却期間が終了すると、投資物件の価値が帳簿上ではゼロになり、減価償却費を経費として計上できなくなります。その結果、手残りが大幅に減少する可能性があります。
減価償却期間中は、減価償却費によって課税所得が減少し、節税効果を得られますが、期間終了後はこの節税効果もなくなります
したがって、減価償却期間終了後のキャッシュフローを正確に予測し、物件価値の低下や修繕費用、税金などの増加を考慮して、投資戦略を立てることが重要になります。
地方高利回り物件は、将来売却時の価格下落リスクが高い
地方の高利回り物件は、将来的に売却する際の価格下落リスクが高いです。これは、地方の人口減少や高齢化の影響で、不動産需要が低下し、物件の価値が下がる可能性があるためです。また、地方の経済状況によっては、空室リスクも高まる可能性があります。
したがって、高利回りに魅力を感じて地方の物件に投資する場合には、将来的な価格下落リスクを十分に考慮し、長期的な視点で投資判断を行う必要があります。
収益悪化による債務超過リスクがある
収益悪化による債務超過リスクとは、不動産投資において、物件の収益が悪化し、その結果、物件からの収入ではローンなどの債務を返済できなくなり、債務が資産価値を上回る状態に陥るリスクのことを指します。
具体的には、空室率の上昇や家賃の下落、修繕費の増加などにより、物件の収益が悪化することが考えられます。その結果、ローン返済が滞り、延滞金や利息が加算されることで債務が増加し、最終的には債務超過に陥る可能性があります。
つまり、フロー(流れ)だけを重視する投資は、資産全体の安定性を損なう恐れがあるのです。
【地主・経営者に必要なのは「ストック思考」】
地主や経営者層にとって重要なのは、短期収益ではなく、資産全体の価値と安定性です。地主や経営者にとって必要な「ストック思考」とは、単に不動産を保有することではなく、長期的な視点に立ち、質の高い資産を戦略的に蓄積し、保全していくという考え方です。資産の質とは、単に利回りが高いだけでなく、立地条件、物件の構造・設備、管理体制など、長期的に価値を維持・向上できるポテンシャルを持つ物件を選ぶということです 。
短期的な高利回り物件に目を奪われるのではなく、将来的な価値の向上や安定した賃料収入が見込める物件を見極める力が重要となります。
相続時に資産評価額を適切に抑え、税負担を軽減する
一般的に、現金や預貯金といった金融資産は、その額面がそのまま相続税評価額となるため、相続税の課税対象額を直接的に増加させます。一方、不動産は、相続税評価額が市場価格よりも低く算定されるという特性を持っています。
この評価額の差を利用することで、相続財産全体の評価額を抑え、結果的に相続税の負担を軽減することが可能になります。特に、賃貸物件として運用することで、「貸家建付地」としての評価減や、「小規模宅地等の特例」の適用により、さらに評価額を圧縮することが可能です 。また、借入金を利用して不動産を購入した場合、その借入金は相続財産から控除されるため、課税対象額を減らす効果があります。
法人株価を下げ、次世代への承継リスクを最小化する
経営者にとって、事業承継は重要な経営課題の一つです。特に、自社株の評価額が高い場合、後継者への株式移転時に多額の相続税や贈与税が発生する可能性があります。このような状況において、不動産投資は株価対策としても有効な手段となり得ます。非上場企業の株式は、相続や贈与の際に評価額が高くなりやすく、後継者への負担となることがあります。
企業が保有する不動産は、その評価方法によって自社株の評価額に影響を与えることがあります。法人所有の不動産が純資産価額方式で評価されることで、簿価・相続税評価などへの影響により結果的に株価圧縮効果が期待できます。
純資産価額方式とは、法人の総資産の価額から負債や法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により相続税の評価をする方法です。
早く言えば不動産の購入で会社の純資産額を減らし、結果的に自社株の評価額を適正化することができます 。また、事業に必要な不動産を会社名義で保有することで、後継者が事業を承継する際の負担を軽減することができます。
長期的に安定した賃料収入を得ることで、老後の生活基盤をつくる
長期的に安定した賃料収入を得ることで、老後の生活基盤を築くだけでなく、現役時代における家計の安定にも大きく貢献します。
家賃や住宅ローンの支払いがなくなる、あるいは大幅に軽減されることで、可処分所得が増え、より豊かな生活を送ることができます。また、将来の年金収入への不安が軽減されることで、精神的なゆとりも生まれます。
これらを実現するためには、「資産性の高い土地×安定収益物件」 を組み合わせた戦略が不可欠です。
【ハタスが提案する本質的資産戦略】
ハタスでは、次の3つを柱にした「ストック型資産防衛戦略」をご提案しています。
① 相続対策視点の不動産投資
相続対策視点の不動産投資として、資産評価圧縮効果を考慮した土地・建物プランニングが挙げられます。購入、売却、賃貸、建替の他、たとえば必要に応じて土地を分割したり、建物を複数建設したりするなど、土地の形状や利用方法を工夫します。また、建物の構造、用途、築年数などを考慮し、木造住宅や賃貸アパートなどを活用するなど資産評価圧縮効果を考慮したプランニングを行います。
さらに、適切な法人活用による相続税対策の最適化として、不動産を所有する法人を設立し、個人資産を法人資産に移転することで、相続税評価額を下げる効果があるケースもあります。
② 株価対策・事業承継支援
企業の株価対策と事業承継を円滑に進めるための包括的な支援を提供します。株価対策では自社株評価の適正な算定と圧縮を通じて、株価を適切な水準にすることにより、事業承継時の相続税や贈与税負担を軽減し、円滑な事業承継を実現します。
事業承継支援では次世代承継に伴うリスクを分析し、適切な対策を講じます。後継者の育成、経営体制の整備、株式の移転方法など、多角的な視点から事業承継をサポートします。法人事業を円滑に承継するための対策を検討し、相続税対策と組み合わせることで、包括的な事業継承支援を提供しています。
③ 長期ストック型収益基盤の形成
長期的なストック型収益基盤の形成は、安定した賃料収入を長期にわたり確保し、資産価値の維持・向上を図ることを目的とします。
都市部優良立地での安定資産投資は、長期的なストック型収益基盤の形成に欠かせません。具体的には、人口減少が進む地方都市と比較して、都市部、特に都心部は人口流入が見込まれるため、賃貸需要が安定し、長期にわたる家賃収入が見込めます。さらに、優良立地であれば、将来的に資産価値が上昇する可能性も高く、売却益も期待できます。
また、都市部の優良立地は、流動性も高く、万が一売却が必要になった場合でも、買い手を見つけやすいというメリットがあります。このような観点から、長期的な視点で安定した収益と資産価値の上昇を目指すのであれば、都市部優良立地への資産投資は、非常に有効な手段と言えるでしょう。
質の高い不動産に投資し、適切な管理・メンテナンスを行うことで、長期的に安定した賃料収入を得ることが可能です。また、立地条件の良い物件や、将来的な発展が見込めるエリアの物件を選ぶことで、資産価値の向上も期待できます。長期的な視点に立ち、入居者のニーズに合わせたリフォームや設備投資を継続的に行うことも、資産価値の維持・向上には不可欠です。
また不動産は、インフレに対する有効なヘッジ手段の一つとされています。インフレが進行すると、一般的に物価や賃金が上昇する傾向があり、それに伴い不動産の価値や賃料も上昇する可能性があります。実物資産である不動産を保有することで、インフレによる貨幣価値の目減りを防ぎ、長期的に資産の価値を保全することができます。また長期にわたる家賃収入で年金収入の不安を解消、個人の老後年金代わりになる安定収益型の不動産を提案します。
【CF最大化モデルとの比較表】
不動産投資におけるキャッシュフロー最大化モデルとハタスの資産防衛型ストック思考モデルは、それぞれ異なる特徴と目的を持っています。それぞれのモデルを比較分析することで、どちらの戦略が地主や経営者にとってより適しているかを検討します。
項目 | キャッシュフロー最大化モデル | ハタスの資産防衛型ストック思考モデル |
---|---|---|
主な目的 | 短期的なキャッシュフロー・手残り最大化 | 長期的な資産防衛、相続・株価対策、次世代承継 |
時間軸 | 短期~中期 | 長期 |
投資対象 | 減価償却重視物件 | 土地資産性重視物件 |
リスク管理 | 減価償却終了後に手残り減 | 長期保有を前提とした安定収益 |
資産価値向上 | 必ずしも重視しない | 積極的に重視 |
相続・株価対策 | あまり意識しない | 徹底的に考慮する |
典型的な投資戦略 | 高利回り物件への集中投資、積極的な賃料設定 | 質の高い物件への長期投資、分散投資、計画的なメンテナンス |
キャッシュフロー最大化モデルは、短期から中期にかけて、可能な限り高い賃料収入(ネットキャッシュフロー)を得ることを主な目的としています。このモデルでは、利回りの高い物件や、賃料設定を高くできる物件への投資が重視され、借入を活用して投資効率を高めることも一般的です。
一方、ハタスが提唱する資産防衛型ストック思考モデルは、短期的なキャッシュフローだけでなく、長期的な資産価値の成長、資産の保全、そして相続や事業承継といった将来の目標達成を重視します。このモデルでは、物件の質、立地、将来性などが重視され、長期的な視点での投資と、適切な管理・メンテナンスによる資産価値の維持・向上が不可欠となります。
キャッシュフロー最大化モデルのメリットは、早期に高い収益を期待できる点です。しかし、市場変動や金利上昇、空室リスクなどに対する脆弱性が高く、長期的な資産価値の維持が難しい場合があります。また、相続対策としては、不動産の分割の難しさなどから、必ずしも適しているとは言えません。
一方、ストック思考モデルのメリットは、長期的に安定した資産形成が可能であり、インフレにも強く、相続や事業承継といった将来の目標達成にも貢献できる点です。デメリットとしては、短期的な収益性はキャッシュフロー最大化モデルに劣る場合があることや、初期投資の負担が大きい場合があることが挙げられます。
【堅実な資産防衛型不動産投資”という選択】
これからの不動産投資は、ただキャッシュフローを追い求める時代ではありません。経済状況の変動、長期的な資産価値の維持、そして次世代への円滑な資産承継といった観点から、地主や経営者にとって「ストック思考」に基づいた不動産投資戦略の採用は、もはや戦略的な必然と言えるでしょう。
資産防衛型ストック思考モデルは、長期的な資産価値の成長、資産の保全、そして相続や事業承継といった重要な目標の達成に貢献します。質の高い不動産への長期投資、適切なリスク分散、相続対策・株価対策、計画的なメンテナンス、そして税制上の優遇措置の活用などを組み合わせることで、安定した資産形成と次世代への円滑な資産承継を実現することが可能となります。
本当に守るべきものは、「資産の価値」であり、「次世代への橋渡し」です。
ハタスは、地主・経営者の皆様に向けて、相続対策・株価対策を視野に入れた、堅実な資産形成をサポートします。