2025/06/06
お役立ちコラム

ハタスが提唱する本当の一棟戦略とは?

ハタスが提唱する本当の一棟戦略とは?利回りだけの時代は終わった。
いま資産家が選び始めている「防衛と継承」のための一棟とは?

富裕層の不動産投資は、従来の築古高利回り重視から、安全性と資産価値維持を重視する傾向にシフトしています。築古物件は初期の利回りは高いものの、長期的には資産価値の低下、大規模修繕費の増加、空室リスクの上昇、融資評価の厳格化といったデメリットが顕在化します。耐用年数を超えた建物は理論上価値がゼロと評価され、相続時の資産額にも影響します。したがって、短期的な高利回り追求型の築古物件投資は、長期的な資産維持には不利となる可能性が高いと言えます。利回り重視の投資を超え、防衛と継承のための1棟投資を考えます。

【問題提起①】築古・高利回り物件が「資産を削る」という事実、知っていますか?

例えば築20年以上のアパートは設備の老朽化が進み、給湯器・配管・外壁の交換など多額の修繕費用が必要になります。また、築年数が法定耐用年数を超えた物件は銀行融資の対象外となる場合が多く、担保価値が低いとみなされがちです。築古・高利回り物件が長期的に見て資産性にマイナスとなる要因は以下の通りです。

修繕費負担

築古物件は設備・構造の老朽化が進み、床材・壁紙から給湯器、エアコン、配管、防水、外壁まで大規模修繕が必要となり費用がかさむ。

空室リスク

新築・築浅物件に比べ築古物件は入居者の関心が低く、家賃設定を抑えないと競争力が落ち、空室率が高まりやすい。

融資評価の難化

銀行は築年数や建物価値を重視するため、築古物件は積算評価(特に建物部分)で不利になる。地方のRC物件は土地評価で融資が得やすい面もあるが、逆に老朽化で維持・解体コストも大きくなる。

減価償却の限界

築年数が法定耐用年数を超えた建物は資産価値ゼロと見なされ、相続評価でも土地評価が中心となる。節税効果も減少し実質利回りが低下する。これらのリスクが複合すると、「利回り重視」の一棟投資は資産を減らしてしまう恐れがあります。高い利回りを追求して借入を拡大すると、空室や修繕費で実質収益率が急減し、将来的に含み損が膨らむ事態も起こりえます。

【問題提起②】なぜ“利回り重視の一棟投資”は、資産家を困らせるのか?

利回りを第一に考える投資戦略には、以下のような投資家を困らせる課題があります。これらは特に資産家が回避すべき点です。

空室・家賃滞納リスク

賃貸需要や入居者層を軽視した高利回り物件は空室が増え、収入が不安定になる。若年層や高齢者などの属性で入居者ニーズが異なるため、ターゲットに合わない物件は空室が長期化しやすい。

修繕・維持費負担

築古物件ほど設備故障や老朽化が進むため、修繕費用や維持コストが想定以上に膨らむ。大規模修繕のタイミングで資金が必要になると収支が大きく悪化する。

金融機関評価

金融機関は「収益還元評価」と「積算評価」の両面で担保価値を判断する。築古物件では将来の収益が不安視され、建物の積算価値も低くなるため、融資条件が厳しくなりやすい。融資比率が抑えられると資金調達が困難になる。

相続時の不利益

高利回り狙いでフルローンなどレバレッジを効かせると、相続時に借入金負担が重くなる。土地・建物の評価額は低減し相続税面では有利に働く場合もありますが、一方で資産を次世代に「そのまま残す」ことを考えると、過大な債務を抱えた状態では継承に支障が生じます。また、個人名義の場合は小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地)を活用すれば土地評価を最大50%減額できるものの、法人化するとこれらの個人特例が使えなくなる点にも留意が必要です。
これらを総合すると、単純に利回りだけを重視した投資は中長期で収益悪化を招きやすいことがわかります。築古高利回り戦略は短期利益に寄りがちな一方で、5年後・10年後に大きな支出や空室負担を抱える可能性が高いのです。

【問題提起③】あなたの投資は、「5年後のトラブル」を先送りしていませんか?

将来の問題発生を防ぐため、現状では立地・テナント属性・土地資産性に重点を置いた物件が選ばれています。ポイントは次の通りです。

立地(ロケーション)重視を

不動産の価値は立地で決まると言われるように、東京23区や大阪中心部、名古屋・福岡など大都市圏の駅近エリアが優先されます。これらの都心好立地物件は賃貸需要が高く安定しており、繁華街や主要オフィス・教育機関が近くに集積するためニーズが堅調です。また、購入後の売却(出口戦略)を考えても流動性が高いため買い手が見つかりやすい利点があります。とはいえ、大都市であればそもそも地価が高く、初期投資に多額の費用負担が発生します。
したがって、たとえば名古屋を含む愛知県でいえば、そこまで地価が高騰していない三河エリアは狙い目のひとつといえます。トヨタ自動車を筆頭とする自動車関連企業(デンソー、豊田自動織機、アイシンなど、多数のトヨタグループ企業)が多いことと、それらの企業への雇用が安定しているからです。これらの企業は地域経済を牽引し雇用を多く創出しているため、賃貸需要は高く安定しています。また、繁華街、主要オフィス、教育機関が近隣に集積しているためニーズが堅調であり、結果として土地の資産性も安定しています。

テナント属性は

法人契約や社宅契約、学生向け寮契約など信用度・安定性の高い入居者層(属性の良いテナント)を想定するケースも増えています。例えば、オフィス街近くなら企業への社宅提供、大学近辺なら学生寮、医療機関近くなら病院関係者向けなど、地域特性にあった集客戦略が重要です。複数室で運用する一棟物件では、入居者層を分散させることで収入源を多様化し、一部の空室が全体収益に与える影響を抑えます。

土地資産性は

良好な地価動向が期待できる土地を重視します。国土交通省の地価LOOKレポートによれば、利便性・居住環境に優れた都市部では地価が継続して上昇傾向にあります。地方都市においても、地域経済の底堅さ、雇用機会の安定などを指標に、将来的な地価の安定性、上昇傾向が期待できます。すなわち、建物が古くなっても土地の価値が下がりにくいため、資産価値の下支えとなります。加えて、容積率緩和の可能性や今後の再開発計画などから、将来の土地利用価値を見極めることも重要です。

【問題提起④】利回りより“残る価値”で選ぶ、投資判断基準とチェックポイント

一棟投資で資産を守り継承するには、築古・新築を問わず以下のポイントで厳密に物件を選定・検証することを提案します。

立地選定

主要駅からの徒歩距離や、周辺商業施設・公共交通網へのアクセス状況を確認します。人口動態や再開発計画も考慮し、長期的に需要が見込まれるエリアかどうか精査します。

建物状態と構造

築年・建物階数・構造(木造、RC造、SRC造など)をチェックし、耐用年数や耐震基準適合の有無を確認します。築古の場合は過去の大規模修繕履歴や耐震補強の有無、躯体および外観・設備の現況も詳しく調査し、追加投資の見積りを立てます。

収支シミュレーション

家賃設定・満室想定利回りだけでなく、空室率、賃貸管理費用、将来の修繕費・税金・保険料などを織り込んだ収支計画を作成します。銀行融資の返済額や金利リスクも加味し、利回りが見かけ倒しにならないか慎重に検証します。テナント属性・リーシング:想定入居者層に合う間取り・設備・家賃帯になっているか、近隣供給物件との競合状況はどうか確認します。法人契約や高属性の個人契約を前提に収益の安定度を評価し、管理会社のリーシング能力や空室対策プランの実行力も重視します。

出口戦略

事業継続時だけでなく、将来の売却や承継シナリオも考慮します。譲渡時の税務負担や次世代への移管手続き、または増改築・建替えの自由度(再建築許可要件・容積率)などを事前に確認し、長期保有でも価値が毀損しないか検討します。

一棟投資に「防衛と継承」という選択肢を?資産が守られる設計とは?

防衛と継承を念頭に置いた投資設計では、法人化や土地評価対策、税制特例の活用が鍵となります。

法人化

個人所有の不動産賃貸事業を法人化すると、法人名義で資産を保有・運用できます。法人化によって事業用不動産は法人資産とみなされるため、個人の相続財産評価額を減少させる効果があります。つまり、自分名義の財産を法人へ移すことで、個人の財産規模をあらかじめ圧縮し、相続税額の軽減が期待できます。さらに、法人の場合は損益通算や資産減価償却など税務上の優遇も得られます。

土地評価の圧縮

賃貸用地は相続税評価で通常より低い「貸家建付地評価(概ね土地評価の70%)」となります。加えて貸付事業用宅地等の特例を使えば、最大200㎡まで土地評価額がさらに減額されます。このため、個人所有の場合は賃貸アパート用地を活用し土地評価を極力下げることで相続税負担を軽減できます。法人化の場合はこれら個人向けの特例が使えない点に留意が必要ですが、法人株式評価や事業承継税制を検討することで代替策を講じます。

固定資産税・都市計画税の軽減

新築賃貸住宅には建物固定資産税の減免措置(認定住宅等)が適用可能です。一般に、新築住宅の床面積120㎡までの部分は固定資産税が竣工後3年間(中高層耐火建築物なら5年間)2分の1になります。新築投資の場合はこの減税メリットを最大限活用し、当初数年の税負担を抑える設計が効果的です。

生前贈与・相続対策

相続財産を減らす手段として、年間110万円の基礎控除内の贈与や、婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与(最大2,000万円まで非課税)なども有効です。富裕層の場合、次世代への資産移転は賃貸物件そのものではなく持株を通じて行うケースもあります。たとえば法人所有の場合、贈与・相続で株式を移転することで贈与税・相続税の特例を活用できます。ただし贈与・相続税の適用条件や申告手続きは複雑であるため、税理士と連携して計画的に進める必要があります。
以上のように、土地の資産性に配慮した立地・建物選定、テナントポートフォリオ、適切な法人・税制戦略を組み合わせることで、資産家は「防衛と継承」を両立させる一棟投資を実現できます。各種戦略や特例を踏まえた設計・チェックにより、5年後・10年後も安定した収益と確実な資産承継を目指すことができます。