2026/04/27
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相続税対策のアパート経営は危険?失敗しないための条件と注意点

相続税対策のアパート経営は危険?失敗しないための条件と注意点

相続税の負担を少しでも減らしたいと考えるとき、アパート経営は有効な選択肢の一つとして広く認識されています。
しかし、「節税になるから」と安易に始めると、空室の発生や修繕費の増大などにより、かえって大切な資産を減らしてしまうリスクを伴う事業でもあります。
本記事では、アパート経営が節税になる仕組みや具体的なシミュレーション、潜んでいるリスクを解説します。
失敗しないための条件を整理し、客観的な視点で有効性を判断するための材料としてまとめています。

なぜアパート経営が相続税対策になると言われるのか?

現金をそのまま相続するよりも、アパートを建築して不動産として相続したほうが、結果的に支払う税金が安くなるケースは珍しくありません。
これは、日本の税制において現金と不動産の評価基準が明確に異なるためです。
借入金の活用や国が定めた特例制度を利用することで、課税対象となる財産額を大幅に圧縮できる仕組みが整っています。
税負担を軽減しながら資産を引き継ぐための基本的な理由と構造を押さえておくことが欠かせません。

現金より土地や建物の相続税評価額が低い理由

相続税は、被相続人が遺した財産の評価額に基づいて計算される税金です。
現金の場合、1億円はそのまま1億円として評価され、100%の価値に対して課税対象となります。
一方、不動産は「財産評価基本通達」に基づいて評価され、通常は実際の時価よりも低く見積もられます。
具体的には、土地は時価の約8割となる「路線価」、建物は建築費の約5〜7割となる「固定資産税評価額」が基準です。
さらに、自身で使うのではなく他人に貸し出す「貸家建付地」や「貸家」の扱いになれば、借地権割合や借家権割合が差し引かれ、
評価額は現金の半分以下まで下がることも少なくありません。

借入金で建てることで財産評価額を圧縮できる仕組み

アパートを建築する際、自己資金だけで賄うのではなく金融機関から融資を受けることで、さらなる節税効果を生み出せます。
相続税の計算では、プラスの財産から借入金などのマイナスの財産を差し引く「債務控除」が認められているためです。
例えば、1億円の融資を受けてアパートを建てた場合、建築した建物の評価額は約5,000万円程度まで下がりますが、借入金の1億円はそのままマイナス財産として計上可能です。
この差額が全体の財産評価額を大きく引き下げる要因となります。
ただし、ローン返済が進んで借入金残高が減ると、この控除効果は徐々に小さくなる点に注意が必要です。

「小規模宅地等の特例」でさらに評価額を下げる方法

アパート経営を行う土地に対しては、「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」を適用できる可能性があります。
これは、亡くなった人が事業や居住に使っていた土地を相続する際、一定の要件を満たすことで土地の評価額を大幅に減額できる制度です。
賃貸アパートが建っている土地の場合、面積200平方メートルまでの部分について、相続税評価額を50%減額する措置を受けられます。
もともと貸家建付地として評価が下がっている土地にこの特例を組み合わせることで、土地にかかる税負担を極めて低く抑えることが可能です。
適用には相続開始前からの事業継続や相続後の保有期間など厳密な条件が定められています。

シミュレーションで見る!アパート経営の具体的な節税効果

1億円の資産を現金でそのまま相続した場合と、その1億円を金融機関から借り入れてアパートを建築した場合を想定した比較を行います。
評価額の圧縮や債務控除がどのように税額に影響を与えるのか、具体的な計算シミュレーションを通じてその差額を把握することが欠かせません。
現金のままで残す場合と不動産投資を行った場合の、税負担の明確な違いを確認します。

現金1億円を相続する場合の相続税額

現金1億円のみを所有し、法定相続人が子ども1人であるケースを想定します。
現金の相続税評価額は額面通り1億円です。
相続税を計算する際、まずは基礎控除額を差し引く必要があります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、この場合は3,600万円となります。
1億円から3,600万円を引いた6,400万円が課税対象額です。
国税庁の相続税の速算表に当てはめると、6,400万円に対する税率は30%、控除額が700万円に設定されています。
計算式は「6,400万円×30%-700万円」となり、最終的な相続税額は1,220万円と算出されます。

1億円を借りてアパートを建てた場合の相続税額比較

次に、1億円を全額借り入れてアパートを建築した場合の計算です。
借入金1億円は全額が債務控除の対象として扱われます。
アパートの建物評価額は建築費用の約5割の5,000万円となり、さらに借家権割合を引いて3,500万円になると仮定します。
もともと所有していた土地1億円分の評価額も、貸家建付地となることで約8,000万円に下がったとみなします。
プラスの財産は土地8,000万円と建物3,500万円の合計1億1,500万円です。
そこから借入金1億円を引くと、純資産の評価額は1,500万円に計算されます。
この1,500万円は基礎控除の3,600万円を下回るため、課税対象額はゼロとなり、相続税は一切発生しません。

「節税になる」は本当?アパート経営に潜む7つのリスクと失敗例

シミュレーション上では劇的な節税効果が見込めるアパート経営ですが、現実には必ずしも計算通りに進むとは限りません。
建築会社の営業トークを鵜呑みにして始めてしまい、後に多額の赤字を抱えたり、親族間の争いに発展したりするケースは後を絶たないのが実情です。
アパート経営は単なる税金対策ではなく、長期的な不動産事業としての側面を持った運用方法と言えます。
経営の継続を脅かす深刻なリスクと、実際によくある失敗のパターンをあらかじめ認識しておく必要があります。

リスク1:空室や家賃下落で収支が赤字になる

アパート経営における最大の脅威は空室の発生です。
新築時は満室であっても、築年数が経過するにつれて物件の競争力は低下し、退去後の新たな入居者が決まりにくくなる傾向にあります。
空室を埋めるためには家賃を下げざるを得ず、予定していた賃料収入が大幅に減少する事態を招きます。
一方で、金融機関へのローン返済や固定資産税の支払いは毎月一定額発生するため、収入が支出を下回ればたちまちキャッシュフローは赤字に転落します。
節税目的で建てたアパートの赤字を補填するために、個人の預貯金を持ち出すケースは決して珍しくありません。

リスク2:想定外の修繕費でキャッシュフローが悪化する

建物の老朽化は避けられず、資産価値を維持するためには定期的なメンテナンスが不可欠です。
退去ごとの原状回復費用のほか、給湯器やエアコンなどの設備交換費用が突発的に発生する事態も考慮しなければなりません。
さらに、築10年から15年周期で外壁塗装や屋根の防水工事といった数百万単位の大規模修繕が求められます。
建築当初の資金計画でこれらの修繕費を甘く見積もっていると、いざ工事が必要になった際に資金がショートします。
十分な修繕が行えない物件は入居者から敬遠され、さらなる空室と家賃下落を招く悪循環に陥る危険性を孕んでいます。

リスク3:賃貸需要のない土地に建ててしまい資産価値が下落する

先祖代々受け継いできた土地を守るためにアパートを建てるケースで頻出する失敗パターンです。
駅から遠い、周辺に大学や企業がないなど、そもそも賃貸ニーズが乏しいエリアに建築してしまうと、どれほど立派な建物を建てても入居者は集まりません。
空室が恒常化すれば収益性は著しく低下し、投資物件としての価値も連動して暴落を招きます。
結果として、相続税の評価額を下げることには成功しても、投じた建築費用の回収が不可能となり、実質的な経済的損失を被る羽目に陥ります。

リスク4:相続人の間で遺産分割トラブル(争族)に発展する

現金は1円単位で平等に分けることができますが、不動産は物理的に分割することが極めて困難な財産です。
親が良かれと思ってアパートを建てた結果、相続が発生した際に誰がその物件を引き継ぐかで子どもたちの間で揉める原因になります。
複数の相続人で共有名義にすると、将来の売却や修繕の際に全員の同意が必要となり、意思決定が滞るリスクを抱え込むことになりかねません。
また、アパートを相続した人が他の兄弟に代償金を支払わなければならない場合、その資金調達ができずにトラブルが長期化する事例も頻発しています。

リスク5:節税目的が税務署に否認されてしまう

行き過ぎた節税対策は、税務調査において否認されるリスクを孕む行為です。
財産評価基本通達には「総則6項」と呼ばれる規定があり、通常のルールで評価することが著しく不適当と認められる場合、税務署長が独自の基準で再評価できる権限を持っています。
近年、相続開始の直前に多額の借り入れを行って不動産を購入し、意図的に評価額を極端に圧縮したケースにおいて、
国税当局がこの規定を適用して時価での評価を命じる事例が増加傾向にあります。
最高裁でも国側の主張が認められる判決が出ており、あからさまな租税回避行為には厳しい目が向けられています。

リスク6:物件管理の手間が相続人の大きな負担になる

アパート経営には、入居者の募集から契約手続き、家賃の集金、清掃、クレーム対応など、多岐にわたる管理業務が伴うものです。
管理会社に委託することも可能ですが、最終的な意思決定や修繕費用の負担はオーナー自身が行わなければなりません。
親世代が自身の時間を使って管理していた物件を、別居してサラリーマンとして働く子世代が相続した場合、
本業の合間にこれらの業務をこなすことは精神的・時間的に大きな負担となります。
親の思いに反して、子どもにとっては手放したい厄介な財産と認識されてしまうケースも存在します。

リスク7:売りたい時に売れず「負動産」化してしまう

収支が悪化したり管理が負担になったりしてアパートを手放そうとしても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。
特に立地条件が悪く、築年数が古くて空室の目立つ物件は、投資家からも見向きもされないのが現実です。
売却するためには価格を大幅に下げるか、多額の費用をかけてリフォームを行う必要が生じます。
買い手がつかない間も固定資産税や維持管理費、ローンの支払いは継続するため、保有しているだけで資産を目減りさせる負の遺産へと変貌を遂げてしまいます。
相続税対策で失敗しないアパート経営を成功させるための必須条件を調べる

相続税対策で失敗しない!アパート経営を成功させるための必須条件

多くのリスクが存在する一方で、条件をクリアすればアパート経営は強力な資産形成の手段となります。
失敗を防ぐためには、目先の税制上のメリットにとらわれず、不動産事業としての事業性を冷徹に見極める視点を持つべきです。
リスクを最小限に抑え、親から子へ優良な資産として引き継ぐために必ず守るべき必須条件を把握することが求められます。

賃貸ニーズが見込める優良な立地を厳選する

アパート経営の成否の9割は立地で決まると言っても過言ではありません。
所有している土地だからという理由だけで建てるのではなく、そのエリアに継続的な賃貸需要があるかを客観的に調査する必要があります。
最寄り駅からの徒歩分数、周辺の商業施設や学校、病院の有無、地域の人口動態などを徹底的に分析して判断を下します。
もし所有地の需要が見込めない場合は、無理にその土地に建てることは諦め、土地を売却して都心の需要が高いエリアの収益物件に買い替えるといった柔軟な発想が求められます。

無理のない返済計画と現実的な収支シミュレーションを行う

建築会社から提示される事業計画書は、満室想定や甘い家賃設定など、楽観的な数字で作られていることが少なくありません。
新築プレミアムによる高めの家賃は数年で下落し、空室率も経年とともに上昇することを前提に、厳しめの条件で再計算を行います。
また、将来の金利上昇リスクや大規模修繕の費用も最初から経費として組み込んでおく視点が必要です。
空室率が20%から30%になったとしても、ローンの返済や各種税金の支払いが滞らない、強固なキャッシュフロー計画を策定することが事業継続の要となります。

相続税の納税資金を別途確保しておく

アパート経営によって相続税をゼロにできるケースばかりではありません。
一定の税額が発生する場合、相続税は原則として現金で一括納付する義務を負います。
資産の大半を不動産が占め、手元の現金をアパートの建築費や頭金に使い果たしてしまうと、いざ相続が発生した際に納税資金が不足する事態に陥ります。
納税のために急いでアパートを安値で売却せざるを得ない事態を防ぐため、生命保険を活用したり、計画的に預貯金を残したりして、
流動性の高い現金を常に確保しておくバランス感覚が重要です。

相続人全員の同意を得て将来の計画を共有する

アパートを建築する前に、配偶者や子どもたちを含めた家族会議を開き、計画を共有することが不可欠です。
誰が不動産を相続し、ローンを引き継ぐのか、他の兄弟にはどのような財産を渡してバランスをとるのかを事前に話し合っておきます。
また、将来的に子どもたちが経営を引き継ぐ意思があるのかどうかも確認すべき重要なポイントと言えます。
経営の負担を避けたいという意向があれば、別の対策手法を検討する必要があります。
家族全員が納得した上で進めることが、将来の遺産分割トラブルを未然に防ぐ最大の防御策として機能します。

相続や不動産に詳しい専門家へ相談する

不動産を通じた相続対策は、税務、法務、市況分析など多岐にわたる高度な専門知識を要する分野です。
建築会社や金融機関はアパートを建てさせることや融資することが目的であるため、提案内容が必ずしもオーナー一族の最適解とは限りません。
中立的な立場でアドバイスをくれる税理士、不動産鑑定士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家チームを組成することが理想的と言えます。
複数の専門家の意見を交えながら、第三者の客観的な視点で計画の妥当性を検証するプロセスを踏むべきです。

アパート経営だけじゃない?他の相続税対策との比較

土地の有効活用としてアパート経営は代表的ですが、リスクや手間を考慮するとすべての家庭に最適な方法とは言えません。
税負担を軽減し、円滑な資産承継を実現するための手段は他にも存在します。
自身の保有資産の内訳や家族の状況に合わせ、様々な選択肢を比較検討することで、より安全で確実な対応策を講じることが可能になります。

生命保険の非課税枠を活用する方法

現金をそのまま残すのではなく、生命保険に加入して死亡保険金として遺族に残す方法は、確実でリスクの低い対策手法として知られています。
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設定されています。
法定相続人が3人の場合、1,500万円までの保険金には税金がかかりません。
不動産のように価値が下落するリスクや空室に悩まされることもなく、相続発生直後にまとまった現金を受け取れるため
遺産分割の代償金や納税資金の確保としても極めて有効に機能します。

生前贈与で少しずつ財産を移す方法

生きているうちに子どもや孫へ財産を渡す生前贈与も、将来の課税対象財産を減らす王道の手法です。
年間110万円までの基礎控除の枠内で贈与を行う「暦年贈与」を長期間継続すれば、無税で多額の資産を移転できる仕組みになっています。
また、住宅取得資金や教育資金、結婚・子育て資金の贈与に対する特例制度を活用すれば、一度にまとまった金額を非課税で渡すことも可能です。
アパート建築のような多額の借金や経営リスクを負うことなく、着実に次世代へ資産を移行できる安全性の高い方法と言えます。

不動産小口化商品でリスクを分散する方法

不動産投資のメリットを享受しつつ、経営の手間やリスクを排除したい場合に有効なのが「不動産小口化商品」です。
都心の優良なオフィスビルやマンションを数百万単位に小口化して複数の投資家で共有する形を取ります。
実物不動産と同様に評価額の圧縮効果が得られる上、管理・運営は専門会社が行うためオーナーの手間は一切かかりません。
1口単位で購入できるため、複数の子どもに平等に分けやすく、遺産分割時のトラブルを回避しやすいという大きな利点を持っています。
アパート経営の相続税対策に関して相談する

アパート経営の相続税対策に関するよくある質問

アパート経営を通じた節税対策を検討する際、多くの人が共通の疑問を抱きます。
節税効果のタイミングや管理方法、将来の承継に関する不安など、疑問点を解消しておくことは非常に重要です。
ここでは、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

相続開始の直前にアパートを建てても節税効果はありますか?

極端な節税を目的とした直前の借り入れや建築は、税務署から否認され、通常の評価額減額が認められないリスクが高まっています。
効果を確実にするには、事前の計画と数年単位での長期的な事業実績が重要です。

サブリース契約にすれば空室リスクはなくなりますか?

空室リスクそのものが完全に消滅するわけではありません。
サブリースは家賃が保証されますが、数年ごとの契約更新で保証賃料を減額されるのが一般的です。
空室が増えれば減額要求や契約解除のリスクがあります。

子供たちがアパート経営をしたくない場合、どうすればいいですか?

子供に負担をかけないためには、将来売却しやすい都心の優良物件に買い替えるか、不動産小口化商品や生命保険を活用した対策へ切り替えるべきです。
経営を無理強いせず、家族の意向に合わせた選択が求められます。

まとめ

アパート経営は、現金や土地の評価額を圧縮し、多大な節税効果を生み出す有効な手段です。
しかし、空室や修繕費の増大、遺産分割のトラブルといった深刻なリスクが常に隣り合わせの不動産事業でもあります。
目先のメリットだけで判断するのではなく、立地の厳選や緻密なシミュレーションを行い、事業としての成立性を冷静に見極めなければなりません。
自身の資産状況や家族の意向を踏まえ、他の対策手法とも比較しながら、最適な資産承継の形を構築していく姿勢が求められます。

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