2024/07/14
お役立ちコラム

資産管理会社を法人設立する目的・メリットとは?わかりやすく解説

資産管理会社は、個人資産家が保有する不動産や株式を管理・運用するために設立する法人です。資産管理会社の設立により、どのようなメリットやデメリットがあるのかを理解しておくことで、設立を検討すべきか判断できます。本記事では、資産管理会社の仕組みについて解説します。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、会社オーナーや資産家などの個人が持つ、不動産や株式などの財産や資産を管理・運用するための会社であり、プライベートカンパニーと呼ばれる場合もあります。資産管理会社の主な収入源は、不動産賃貸による家賃収入や、株式の所有による配当収入です。一般的な企業とは設置目的が異なるため、資産管理以外の業務は行っていません。

資産管理会社を法人設立する意味(メリット)

資産管理会社を法人設立するのには、以下のメリットがあるためです。

・税負担が個人所有と会社所有で違う
・所得を分散させられる
・相続財産を整理できる
・社会保険に加入できる
・必要経費の範囲を広げたい
・損益通算の範囲を広げたい
・欠損金の繰越控除の期間を延長させられる

税負担が個人所有と会社所有で違うから

不動産や株式を個人で所有する場合には所得税や住民税などがかかり、資産管理会社が法人として所有する場合には法人税や法人住民税などがかかります。

このうち、累進税率が適用される所得税は、最高税率が45%であるのに対し、法人税の税率は最高でも23.2%と決まっています。このため、所得金額が大きくなるほど、高い節税効果を得られるのです。

会社経営にかかるコストも含めて、節税効果が得られる目安は、年間の所得金額が1,000万円を超える場合だとされています。

所得を分散させられるから

資産管理会社を設立すると、それまで資産家本人のみが保有していた所得を役員報酬として親族に支払うことで、所得を分散できます。親族が役員報酬を給与所得として受け取り、他に給与を受け取っていなければ、給与所得控除を受けることも可能です。

給与所得控除は、支払った人数分の合計金額で控除されるため、人数が多くなるほど節税効果も高まります。

相続財産を整理できるから

不動産を資産管理会社へ移転させると、相続に向けた株式の贈与や分割がしやすくなり、相続財産を整理できます。不動産をそのまま子どもに贈与しようとすると、子どもの人数に応じた不動産の持分での分割が必要ですが、資産管理会社への移転であれば株式の分割のみを考えるだけで贈与でき、登記費用が不要となる点も大きなメリットです。

社会保険に加入できるから

資産管理会社を設立し、会社の役員になると、原則として社会保険に加入しなくてはいけません。社会保険への加入により、将来厚生年金を受け取ることができ、年金の受け取り額を増額できます。会社から毎月社会保険料の支払いを負担する必要がありますが、将来の生活を考えると親族を含めて社会保険に加入できると安心です。

必要経費の範囲を広げたいから

必要経費の範囲は個人と法人で大きく異なり、法人であれば事業に直接かかる経費だけでなく、間接的にかかる経費も認められます。個人では直接かかる経費しか認められないため、経費の範囲の拡大は法人設立の大きなメリットです。

法人で認められる経費の一例として、法人名義の車の維持費・役員報酬・出張に伴う日当などがあります。

損益通算の範囲を広げたいから

資産管理会社の設立により、損益通算の範囲を広げられるのもメリットのひとつです。個人事業主でも損益通算は可能ですが、全ての所得で損益通算ができるのではなく、損益通算ができる所得が決まっています。

一方、法人の損益計算は、不動産の売却益と株式の売却損が相殺できるといったように、種類ごとに分けず損失と利益を合算計算できます。

欠損金の繰越控除の期間を延長させられるから

ある年の損失を翌年以降に繰り越して利益を相殺する「欠損金の繰越控除」は、個人では最長3年間であるのに対し、資産管理会社になると最長10年可能となります。利益を平準化すると納税額も大きな変動がなく、事業継続における大きなメリットと言えるでしょう。

資産管理会社を法人設立するデメリット

資産管理会社の設立には、メリットだけでなく以下のデメリットも存在します。

・法人の設立登記に費用(登録免許税・定款認証手数料など)がかかる
・運営のための維持費用(法人税・法人住民税・事業税・士業に支払う費用など)がかかる
・会社の保有資産は個人が自由に使えない
・法人の廃業には、解散決議や清算などの手続きが必要になり費用も発生する

上記のデメリットを理解したうえで、資産管理会社を設立した方が良いのか、しっかりと判断していく必要があります。

まとめ

資産管理会社の設立は、税制面で有利な点が多いものの、設立や運営・廃業にも費用がかかる点を見逃してはいけません。現状を踏まえて、設立すべきかどうか迷った場合、事前に専門家への相談が必要です。

参考サイト
https://www.bk.mufg.jp/soudan/shisan/lp/column/24.html
https://www.obc.co.jp/special/ipo/column/05
https://www.shinsei-if.com/loan/succession/compare/04.html
https://www.freee.co.jp/kb/kb-launch/asset-management-company/#content2-2